ソウルイーター
□たまには甘えたい時もある
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「マカ……」
自室にいた筈のソウルが、ひょっこりとリビングの入り口に顔を出してきた。
「ぅん?……どうしたの?」
読んでいた本からは視線は逸らさずに、声だけでソウルに応答した。
「……寂しい……」
「は?」
何を言い出すんだと思って、バッと後ろを振り返ると、ドアの隙間から顔だけを出して、こちらを窺っているソウルが目に入る。
でも、その顔は普段の生意気な彼の顔とは違い、今にも泣きだしそうな顔をしているのが目に見えて分かった。
「……甘えちゃ……ダメ…?」
おいおいおいおい……
何だ、この変なキャラは。
モジモジとしている女子を見ているようで、何だか妙な気持ちになる。
「なに……急にどうしたの?」
「……甘えんの…やっぱ……ダメ…?」
……それしか言うことないのだろうか?
がチャリとドアが開く音がしたと思えば、さっきよりも表情が歪んでいるソウルが、部屋の中に入ってきた。
「……全く……はい。」
「……?」
「だーかーら、良いよってこと!はい!」
両腕を大きく左右に開いて、ソウルを待ち構える。
……だって…あんなに寂しくて堪らない……みたいな顔されたら、いてもたってもいられなくなったんだもん…。
「……マカ…!!」
ゆっくりと私に近づいて、ゆっくりと自身も両腕を開くと、ソウルは私を力いっぱいに抱き締めてきた。
「……マカ……」
私の名前を呼ぶと、背中に回る腕の力は強くなって、それに答えるように私もソウルの背中に己の腕を回す。
「あ……ちょっと待って…」
「?」
ソウルが一旦私を離すと、私の座っているソファの隣にソウルは座った。
「ん」
再度……今度はソウルの方から腕を開くと、そのまま私を優しく包んだ。
「……はぁ……落ち着く…」
「そう?」
「うん……。マカが側にいるって思うだけで、心が安らいでく……」
「ふふ……思う…じゃなくて、事実私はソウルの側にいるよ?」
「……そうだな」
あんなに冷えきっていたソウルの魂は、私に触れたことによって、急速に暖かくなっていく。
「……マカぁ…」
さっきまでは寂しい寂しい言ってたくせに……。
そんな甘える様な声………耳元で囁かないでよ……。
「……マカ……今日も可愛いな…」
「な…何言ってんの…?」
「ん〜……マカぁ〜…」
スリスリとソウルの頬が私の頬を行ったり来たりすると、柔らかいソウルの銀髪がおでこに何回も触れるため、くすぐったくてしょうがない。
「……寂しいの…治った?」
「んー……あと少しで治るかな……少しって言っても、マカがいないとまた寂しいの酷くなるから……」
「……あっそ……」
「ぅん……マカ…大好き……」
本当にどうしたと言うんだこの男は。
普段は好きさえ言わないだろうに、あっさりと大好きだなんて言いやがる。
「…あれ?マカ……顔が赤い…」
誰のせいだ、誰の!!!
「え?そ…そんなことな」
「大変だ!今から治さないと!!」
「は?……え…ちょ…ソウル!?」
ガバリと抱きしめられたままソファに倒されたかと思えば、すっかり普段の生意気な顔に戻っているソウルが目の前で私を見下ろしている。
「あー……ソウルくん…?」
「しょうがないから、俺が治してあげる」
「うん、お前いつから元気になった?」
「さぁ?……それより、今はマカの方が大事だから」
「……部屋に戻ろうかソウルくん」
「え、あ、やっぱり部屋の方がマカちゃんはお好み?」
このクソガキ……
心の中では必死に悪態をつくけど、きっと今の私の顔は真っ赤っかなんだろう。
ソウルのニヤリ顔がそれを物語っている。
「……てことで今日は『ソウルくん甘えるデー』……」
「いっぺん死んどこうか…?」
だが、マカの抵抗虚しく、その日1日『ソウルくん甘えるデー』になったのは二人だけの秘密。
「(……私の甘えるデーは…?)」
「それは毎日受け付けてるから」
「っ……ソウルのバカっ!!」
-END-