ソウルイーター

□バレンタインは憂鬱
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バレンタインは憂鬱だ。

女の子が好きな男の子に『チョコレート』をあげる日。
逆に、男の子が女の子にあげる国もあるらしいが、デスシティーは女の子から男の子へのルートである。

だから、年に一度だけ訪れるこの日を狙って、学校の女子達は職人武器関係無く、彼に猛アタックする。
毎年毎年、彼は嫌々ながらもプレゼントや手紙を大量に受け取り、家に持ち帰ってくる。

私は、それをただただ見ているだけ。


「……カ……マカ!」
「え……」
「え……じゃねーよ…。さっきから何度も呼んでんのに……」
「ごめんごめん……えと…何か用?」
「……朝食。できたから呼んだの……それより、その箱何?」


私が手に持っていた小さな箱を指差して、彼は首を傾げる。


「あ、あぁ……これね。……秘密」
「は?」
「秘密は秘密なの。よし!朝食食べよ?」
「…………ああ…」


……言えないに決まってる。

あれはソウルに用意したプレゼントだなんて……。


「……なぁ…」
「え?あ、美味しいね今日も」
「………」
「…ソウル…?」
「………」


返答の無いソウルが気になり、動かしていたフォークをお皿に置いて、チラリと彼の様子を伺った。




バチッ……


ジッとこちらを見つめる彼の深紅の瞳が、私の目とかち合った。


「ど……どうしたの、ソウル……」


思わず視線を逸らしてしまった。

あまりにも鋭かったソウルの眼光に堪えられず、逃げるように再びフォークを動かす。


「……今日さ…」
「あ、バレンタインのこと?」
「……違ぇよ……今日の放課後…」
「帰りが遅いなら、私が夕飯作っとくよ?」
「………」
「………」


部屋には自分が動かすフォークとお皿がぶつかりあう無機質な音だけが響く。


「ん……ごちそうさまでした」


サッと席を立ち、食べ終えたお皿を手に持ち、キッチンへと向かった。

……だが、それは何かによって閉ざされた。


『グイッ!』

「きゃっ!」


急に右腕を掴まれバランスを崩した為、お皿を落としたかと思ったが、それはソウルが瞬時に受け取り、机に置いた。


……問題はそこではない。


腕を掴まれて、床に押し倒されたかと思えば、目の前には眉間に皺を寄せるソウルの顔があったのだ。


「ソウ……ル…?」


明らかに不機嫌……と言うより怒っていると言うのか…。
しかし、こんなことをしていたら学校に遅刻してしまう。

いざ立ち上がろう……すると、両手首を片手で押さえられ、両足は彼の足が足と足の間にあり、思うように動かない。


「ソウル……学校遅れちゃうから離して…」
「………」
「聞いてるの?離し……」


言葉も言い終わらない内に、ソウルの唇が己の口に触れた。


「んぅ……ふっ…ぁっ…ソ…ル…」


必死に閉じていた唇を割って入ってくるソウルの舌が、私の口内をどんどん犯していく。


「はっ……ふぁぁっ……ゃめっ…」


逃げても逃げてもソウルが舌を絡ませてくる為、息が続かない。


「……はっ……」
「んふぁっ……ハァっ……ハァ…」


やっと解放されて、酸素不足でクラクラする頭。
しかし、数秒も経たない内に、ソウルはまた自分の唇を私の唇にくっつけてきた。


「はぁっ…ん……ソ…ルぅ……ふぁっ…」


貪りつくようなキスが続いて、一体どれくらいが経っただろうか……。

まぁ……学校は確実に遅刻だろう。


「ハァ……ハァ……ソウ…ル…?」
「………」


まだ怒っているのだろうか?
彼は私を見下げたまま、何も言わない。


「……ソウ」
「マカが悪い」
「え…?」
「マカが……言ってくれないから…嫌だって…」
「……わかってたの…?」


どうやらこいつは、全てを勘づいていたらしい……。

何だか視線を合わせられなくて、あさっての方向へと視線が泳ぐ。


「……当たり前だろ?……明らかにおかしかったし……」
「な……どこがおかしかったのよ!?」
「急にバレンタインとか……放課後としか言ってないのに帰りが遅くなるとか……」
「そ……それは…何となく……」


まずい……。
全部失言ばかり……。
……逃げたい。


「……ま、いいけど。今日は学校サボって、マカとずっと一緒にいるから」
「!!それは駄目よ!!」
「なんで?今日は男の子が女の子に我儘言える日じゃないの?」


……どんな日だ。


「ふざけたこと言ってないで、早く準備………て何してんの?」
「え、お姫様だっこ」
「いや……そんなことは分かってる。何でお姫様だっこ?」


まずい……
嫌な予感しかしない。


「……だって、ちゃんとしたベッドの方がマカも良いでしょ?」


ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、ソウルは私を抱き抱えたまま自身の部屋へと入っていった。






-END-

★オマケ★


「マカ?」
「………何よ…」


結局二人揃って学校をサボり(マカは半強制的だが……)、ソウルの部屋で愛を交わした二人は同じベッドの上で、同じ布団の中でまったりしていた。


「……俺……これからバレンタインはマカが良いな…」
「っ……気が向いたら……ね…」


顔を真っ赤にするマカの予想外の返答に、珍しくソウルも頬をピンク色に染めたのは言うまでもない。

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