ソウルイーター

□ぷれぜんと ふぉー ゆー
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最近、マカが俺に隠し事をしている。


……気がする。

だって明らかに俺を避けて、こっちから話かけても、理由をつけて逃げられる。

まぁ、隠し事というより……よそよそしいと言うか……。

そんなことが、もう一週間も続いているもんだから、こっちとしては堪ったもんじゃない。

「マーカ」
「あ、ソウル。どしたの?」

最初は普通なんだ。
これは、いつもと変わらない。

「あのさ、今日の夜に……」
「ごめん!!」

まだ全部言い終えてねーだろーが。

「……キッドとか誘ってここでパーティーやろうかと思ったんだけど……何か用事でもあんの?」

俺の言葉にマカの翡翠色の瞳が宙を泳ぐ。
これは、マカが嘘をつくときのクセだ。

「い、いやぁ…最近眠くなるの早くて……」

嘘をつくなら、せめてもっとマシな嘘をついてほしい所だ。

「……ふぅん…ま、良いんだけどさ」
「ごめんね…」

それだけ言うと、マカは自分の部屋に入り、俺はキッチンへ向かった。

「なんか隠してんだよなー」

いれたてのコーヒーの良い香りがリビングに漂う。

「………そうだ」

あいつが隠すなら、俺がそれを暴けば良いんじゃねーか。

「ククッ……絶対暴いてやる…」

ソウルは一人、ニヤリと口角を上げた。





―――

只今の時刻……午前1時…。

「今日こそは絶対……」

俺は自分の部屋にこもり、マカの動きを扉ごしでうかがっていた。

「……てか俺は何をしてんだ……」

毛布にくるまり、扉には左耳をくっつけ、そのままの状態。

「……寒いし……」

さっきから寒くてしょうがない。
毛布に包まれていようと、さすがに12月の個室は寒い。
しかし、この部屋には暖房と言う強者が一つもない。

「何で俺がこんなこと……」

ソウルがブツブツと苦情を言っていると、何やらマカの部屋から何かの物音と、マカの怒り混じりの声が聞こえてきた。

『ボカっ!!』

「………もー、出来ないっ!!!」

やはりマカは起きていた。

「眠くなるの早いってやっぱり嘘じゃねーか……」

しかし、今はそんなことにツッコんでいる暇はない。

「……よし、行くか…」

ソウルが考えたこと……
それは……

『バンッ!!』

「きゃっ!!ソ……ソウル!!?」

……マカの部屋に乗り込むことだった。

「………眠くなるの早いんじゃなかったの?」

明らかなる作り笑顔で、俺はマカを問い詰める。

「そ……それは……あ!み、見ちゃダメ!!」

バッと床に落ちていた長四角の空色の箱を、マカは両手で瞬時に隠した。

「……何それ……」

ラッピング最中だったのか、空色の箱と合うように、青と白のチェック柄の包装紙と、深青色のリボンがマカの手からチラリと見えた。

「こ……これは……」

マカの視線が泳ぐ。

「……へぇ…最近やけによそよそしいなぁとか思ってたけど……そういうこと」



「な……何言ってるの!?」

俺の言葉に、マカが困惑した表情で俺を見る。

「……とぼけんなよ……」
「だから何を!!?」

ソウルは等々痺れを切らし、マカにかける言葉が荒くなる。

「だから……男だろ!!?他に好きな奴が出来たから、ここ最近俺を避けてたんだろーが!!!」

はぁっはぁっと息を荒くし、ソウルはマカに背を向ける。
だが、そんなソウルとは裏腹に、マカは『訳が分からない』とでも言うかの様に、ポカンと口を開けてソウルを見つめていた。

「……ちょ…ソウル……あんた何言って……」

しかし、ソウルはマカの言葉など聞かず、部屋の扉へと足を進める。

「……もう良いよ……俺達パートナー解消なんだから……」

それだけ言うと、ソウルはマカの部屋を出て、真っ暗な己の部屋に消えていった。

「………パートナー……解消…?」

そんな馬鹿な……。
何で急にそんな……。

「……ま…まさか…」

マカは己の手の下にある、空色の箱を見つめる。

「……ソウル!!!」

空色の箱を抱えて、マカは向かいの部屋のドアを勢いよく開けた。

「ソウル!!!」

相変わらず真っ暗な部屋の中を進み、人の形に膨らむ布団が乗るベッドへと近寄った。

「ねぇ、ソウル!!あんた勘違いしてる!!」

マカは夜中だと言うのに、大声を出し、ソウルがいるだろう布団をボカボカと殴る。

「ぃって……んだよ……もう関係無いんだから話かけんなよ」

あまりに冷たいソウルの言葉が、マカの心に深く突き刺さる。

「関係……無いって……私の話も聞いてよ!!!」

だが、ソウルはそっぽを向き、マカのいる方には見向きもしない。

「………ソウルの馬鹿っ!!!」

きっと泣いているのだろう……。
張りのあった声は、涙混じりの声になっている……。

「………馬鹿で結構……早く出てってくんない……?」



さすがに言い過ぎたか……。
マカは何も言わずに部屋を出ていった。

………空色の箱を残して…。

「………んだこれ……置いてってんじゃねーよ…」

床に転がっている箱は、所々へこみ、既に四角からは遠ざかった形になっていた。

「………ん?」

噛み合わない箱の隙間から、キラッと光る物が見えた。

「……見ても良いだろ、別に…」

未だにマカにはムカついているが、箱の中身は、やはりとても気になる。
そして、ソウルはゆっくりと箱の蓋を開けた。

「…………これ……」

キラキラと光るネックレス。
主要部分には、深紅の結晶石……。
いつかマカが、俺に似合うと言ってくれたものだ……。

「…………マカ……」

あぁ……何て俺は馬鹿なんだろう…

「マカッ!!!」

急いで再度マカの部屋に入ると、そこにはベッドの上で体育座りをしてうずくまる少女の姿があった。

「…………マカ……」

静かに……そしてゆっくりと……マカのいるベッドに近寄り、優しく……華奢な身体を抱き締めた。

「……ごめん……俺…思いっきり勘違いしてた……」

すると、マカはバッと顔を上げ、赤く充血した瞳で俺の深紅の瞳をとらえた。

「……ではソウルくんに質問です……来週の明日は何の日でしょうか…?」
「来週の……明日…?」

……………あ……

「俺の……誕生日……」
「ピンポンピンポン、大正解。……ちなみにここ一週間の夜は、ずっとプレゼントのラッピングに苦戦してたんだから」

ムスッと頬を膨らませる彼女は、酷く愛らしい。

「……私が他に好きな人なんて出来るわけないじゃん…」

そう言うと、マカは俺の背中に腕を回してきた。

「……少し早いけど…ハッピーバースデー……ソウル…産まれてきてくれてありがとう…」
「…………」

普段滅多に涙なんか流さないけど……

「……ありがとう……マカ…」

俺の頬を一粒の涙が伝っていった。



-END-

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