いつわり長編

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甘い香りに、カラフルな蝶たち。
それらに心を囚われつつある少女、ネヤ。
白い兎を追いかけて、勢いで踏み込んだそこは自分が住む世界とは遠く離れた…夢と妄想、欲望で作られたようなワンダーランド。
ワンダーランドと言うのだから、そりゃあ楽しいことばかりだと甘い期待をしちゃうかもしれない。

しかし…ここはそんな甘いものだけでできた素晴らしい世界では一ミリ足りともないのだ。

げんに、そこら中にいる奇妙な形をした動物や植物はしっかりと道に沿って歩く少女を今か今かと涎を垂らして見ているのだから。










「わぁ…ほんとに果物が落ちてるー」

あの兎が言っていた通り、道端に生える沢山の木の側には熟れに熟れた様々な果物が落ちている。ネヤの住む『あちら』で言う草食動物に似た小さな生き物がその落ちている果物を食べていた。

「…私も一つもらおうかな」

欲に流されて、ふと手にしたのは兎が美味しかったとこぼしていた真っ赤な林檎。
つやつやに光るそれに一口かぶりつけば、甘く…ほんのり酸っぱい味が瞬く間に口内を満たした。
あまりの美味しさに思わずそれに夢中になっていると、少し離れた所に、この世界には似つかわしくない古ぼけた茶色い屋根があることに気づいた。

「なんだろう……」

不思議とこの世界には目が惹かれるものが多くある。まぁ、それもそのはず。だってここは夢の国、又の名不思議の国…ワンダーランド。人の夢が詰まった世界…なんでも有りな世界。
そんなところに迷い込んだ少女は、そりゃぁ好奇心からもあるけど…とりあえずその屋根がある場所に近づいた。































ーーー
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