いつわり長編

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「おい空!!!」
「………何や…」


広場から離れた空とその仲間達は、村が見える近くの山の中で身を潜めていた。


「何で勝手に行動するんだ!!下手すれば俺らは役人に捕まってたかもしれないんだぞ!!?」
「……………」


黒髪の男の言葉に、その場にいた全員が項垂れた。


「……焦るのは分かる……でも」
「煩いわ!!!!!」


空の怒声に男は口をつぐむ。


「………そんなもん……分かっとるわ……」
「そうだぜ、こじゅー」


近くにあった小枝を指で転がし、顔に赤い模様の入った男は揚々と喋った。


「空だってそんくらいはわかってる筈だぜ?」
「……だが…」
「大丈夫大丈夫、な?蝶左」
「何で俺に振るワケ…?」


蝶左と呼ばれる緑髪の男は、赤い模様の入った男の頬を指で突っついた。


「いててててっ……だって俺にはよく分かんないんだもーん」

「だからって俺に振る理由は無いだろ…?……俺はこのての問題は苦手なの。分かるかな?お馬鹿な烏頭目くん。」

「なっ……ばかって言ったー!」


赤い模様……烏頭目と呼ばれる男は、蝶左の首にガブリと噛み付いた。


「いでぇぇぇぇぇぇぇ!!!何しやがんだ、この野郎!!」

「蝶左がいけねーんだもん!!俺にばかって言うから!!」

「だって本当のことだろーが!!ばーかばーかばーか」

「ば……ばかって三回も言ったー!!」

「あぁ何回でもいってやるよ!!ばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーか!!!」

「っ……うがぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


蝶左と烏頭目はそのまま殴りあいのケンカを始めたが、誰も止めようとはしなかった。






「……でもさぁ……何でねーちゃん、あんなに変わっちゃったのかなぁー…?」
「あれは、妾の知ってるねーやんなんかじゃないわん……」


猫目とセクシー女が珍しく深刻そうな顔で考えこんでいた。


「……控……岩清……」


黒髪は何とも言えない顔で二人を見つめた。
そんな中、黙っていた空が口を開き始めた。


「………おい薬馬……」
「ん?」
「………あの男……白蝉とか言うとった…」
「白蝉……?」


空の発した白蝉と言う名に薬馬は、急に考えこみ出した。


「…………あ!!!」

「なんや?何か知っとるのか?」

「知ってるも何も……こいつは……都で有名だった最悪最低と言われた最凶の偽り人だよ…」

「……偽り人……やて…?」

「ああ……こいつは確か……何度か役人に捕まって、全部逃げ出してんだ……。途中名前変えてたから思い出せなかった……」


薬馬の言葉と同時に、空の頭から、ブチッ、という変な音がした。


「………おい……その偽り人……本名なんやねん…」


感じたことのない空の殺気に、その場にいた全員がブルルッと身震いをした。


「ほ……本名がその白蝉て名だ…。木々俚白蝉……多分何度か名前変えて……最終的に本名に戻ったんじゃないかと……」
「………木々俚……白蝉……」













「……殺す」


空の言葉は皆を凍らせた。


「ちょ……駄目だ空!!殺すのはさすがに駄目だ!!」
「そうだよ空くん!!殺す前にねーちゃんを……」
「あ、馬鹿!」


控の失言に薬馬が一気に冷や汗をかく。


「う………空……くん…?」
「空……?」
「よし…行くで。偽り人狩りの始まりや……」


暫しの沈黙は、皆を更にパニックにさせる。



「いやいやいやいや、駄目だからね!?」「空くん、狩りなんて駄目だよ!」
「カカカカカカカカカカ……楽しみやのぉ……白蝉のバラバラになった姿……」
「空駄目だぁぁぁぁぁ!!」





爆弾作りを始めた空と、慌ててそれを止める薬馬達……。


果たして……閨はどうなってしまうのか……。





「誰か空を止めてぇぇぇぇぇっ!!」








ーTo be continuedー

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