いつわり長編
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……たまたま見かけた古い里にて休憩を取っている空一行。
運が良いことに、この里には、一人として人が住んでいなかった為、一行は各自好きなことをして楽しんでいた。
そんな中、普段はぽちと遊んでいる空が、珍しくソワソワと落ち着きがなく、屋敷内をウロウロと歩き回っていた。
「おい薬馬、ねーちゃんどこや?」
「え、閨?見てないけど……いないのか?」
薬をいじっていた薬馬の返答に、空が『はぁ……』と溜め息をついたのを見て、薬馬は不思議そうな顔をする。
「何や……使えん奴やのぅ……」
大抵空がこういう言葉を発した後は、強烈な拳か蹴りが来るので、薬馬は身構えた。
……しかし…
「……じゃあ、もし見つけたら教えてや」
「え!?」
予想とは、あまりにもかけ離れていた空の反応に、薬馬はすっとんきょうな声を上げた。
「な……殴らない……!?」
もはや根本的に間違っている薬馬はスルーで、再び空は屋敷内をウロウロとし始めた。
そして、空は何を思ったのか、一行全員に閨の行方を聞き始めた。
1、ぽちに聞いてみた。
「おねーさまですかー?ぽちはー、おねーさまをー見てないですー」
「そーかー。おおきになー」
2、控に聞いてみた。
「……ねーちゃん?見てないよ。それより、遊ぼーよ空くん!」
「今は遊んどる場合ちゃう。またあとでな」
3、姫さんに聞いてみた。
「ねーやん?……今日は見てないわん……」
「……そうか……」
4、烏頭目に聞いてみた。
「ねーちゃん?見てないよな……なぁ蝶左?」
「俺に振るなよ……まぁ、確かに見てないワケ。」
「……これで一匹と四人目や……。ほんま、どこ行ったんやろな……?」
5、蝶左に……は聞いたから……
6、チビっこに聞いてみた。
「閨……?みなも……見てない……」
「これもあかんかー……チビっこなら見た思たんやけどな……」
だが、これで終わりではなかった。
みなもの口から驚きの言葉が発されたのだ。
「でも……閨……今……危ない所にいる……このままだと……閨…死んじゃう……」
「……なんやて……?」
やっと手にした情報は、あまりにも唐突すぎた。
「で、今どこにおるんや、ねーちゃんは」
嫌な予感が頭をよぎる。
「詳しいことは……分からない……でも……多分……これは………崖…」
それを聞いた空は目を見開き、急いで屋敷を出た。
何で……何で崖におるんや……!?
まぁ、そんなことはどうでもエエんや!!
とにかくねーちゃん探さんと……!!
深い闇が夕空を侵食していく中、空は颯爽と草原を走り出したのだった。
ーTo be continuedー