いつわり長編

□1
1ページ/1ページ









……たまたま見かけた古い里にて休憩を取っている空一行。
運が良いことに、この里には、一人として人が住んでいなかった為、一行は各自好きなことをして楽しんでいた。
そんな中、普段はぽちと遊んでいる空が、珍しくソワソワと落ち着きがなく、屋敷内をウロウロと歩き回っていた。

「おい薬馬、ねーちゃんどこや?」
「え、閨?見てないけど……いないのか?」

薬をいじっていた薬馬の返答に、空が『はぁ……』と溜め息をついたのを見て、薬馬は不思議そうな顔をする。

「何や……使えん奴やのぅ……」

大抵空がこういう言葉を発した後は、強烈な拳か蹴りが来るので、薬馬は身構えた。
……しかし…

「……じゃあ、もし見つけたら教えてや」
「え!?」

予想とは、あまりにもかけ離れていた空の反応に、薬馬はすっとんきょうな声を上げた。

「な……殴らない……!?」

もはや根本的に間違っている薬馬はスルーで、再び空は屋敷内をウロウロとし始めた。
そして、空は何を思ったのか、一行全員に閨の行方を聞き始めた。



1、ぽちに聞いてみた。
「おねーさまですかー?ぽちはー、おねーさまをー見てないですー」
「そーかー。おおきになー」


2、控に聞いてみた。
「……ねーちゃん?見てないよ。それより、遊ぼーよ空くん!」
「今は遊んどる場合ちゃう。またあとでな」


3、姫さんに聞いてみた。
「ねーやん?……今日は見てないわん……」
「……そうか……」


4、烏頭目に聞いてみた。
「ねーちゃん?見てないよな……なぁ蝶左?」
「俺に振るなよ……まぁ、確かに見てないワケ。」
「……これで一匹と四人目や……。ほんま、どこ行ったんやろな……?」


5、蝶左に……は聞いたから……


6、チビっこに聞いてみた。
「閨……?みなも……見てない……」
「これもあかんかー……チビっこなら見た思たんやけどな……」


だが、これで終わりではなかった。
みなもの口から驚きの言葉が発されたのだ。



「でも……閨……今……危ない所にいる……このままだと……閨…死んじゃう……」
「……なんやて……?」

やっと手にした情報は、あまりにも唐突すぎた。

「で、今どこにおるんや、ねーちゃんは」

嫌な予感が頭をよぎる。

「詳しいことは……分からない……でも……多分……これは………崖…」

それを聞いた空は目を見開き、急いで屋敷を出た。


何で……何で崖におるんや……!?
まぁ、そんなことはどうでもエエんや!!
とにかくねーちゃん探さんと……!!


深い闇が夕空を侵食していく中、空は颯爽と草原を走り出したのだった。




ーTo be continuedー

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ