いつわり長編

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「……あ…助かっ……た……」

死ぬ覚悟までしていた閨は、空に助けられ暫く呆けていた。

「……じゃあ、ねーちゃんも無事助かったことやし……帰ろや!」

先に歩き出す空を見て、慌てて閨は立ち上がる。

「…あ……そうやそうや。ねーちゃん……ほら……」

すると空は、武器をつけていない右手を閨に差し出した。

「……?何ですの?」

閨は不思議そうにその手を見つめる。

「何って……手や…手!!また崖にでも落ちかけたら、今度こそは助けられへんからな!!」

それだけ言うと空は、閨の前まで来て閨が手を重ねるのを待つ。

「……何しとんねん…はよせえな」
「で……でも…」

モジモジとして動かない閨を見つめると、空は手を引っ込めて踵を返してしまった。


「……ま、ええんやけど……」

すると閨は焦って、空の後を追いかけた。
途中で転んだが……。

『ガツッ……』

「う……空さん……きゃっ……」

今度は石につまずき、思い切り転んでしまった。


は……恥ずかしいですわ……


情けない気持ちが一杯で、涙が出そうになるのを必死にこらえる。
そんな閨に、先を歩いていた空が笑いながら近寄ってきた。

「カカカッ……ほんまねーちゃんはドジやなぁ……」

そのまま空は、閨に再び手を差し出した。

「ほら、掴まらんと立てへんやろ?ドジやからのぅ…」

まだ笑っているが、声は物凄く優しい声をしていることに閨は気づいた。

「そ……そんなことありませんわ!……でも…やっぱり…」
「やっぱりなんや?はよ帰らんと、腹すかせとるぽちが可哀想や」

軽くぽちに嫉妬しながら、閨はゆっくりと己の手を空の大きな掌に重ねた。

「じゃ……じゃあ、お言葉に甘えて……」


空の力を借りながら、閨は立ち上がり、そのまま二人は肩を並べて歩き出した。

「でも……やっぱり…恥ずかしいですわ…」

それを聞いた空は、小さく笑い、ポツリと……でも確かに聞こえる声で、こう呟いた。


「……ま、たまにはエエんちゃう?」

閨は頬を染めながら、はい、と小さく答えた……



-END-
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