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【黄瀬と自分大嫌い少女】






「美雲っち!美雲っち!」
『…なに、また来たの』
「そんなとこに座ってたら危ないッスよ!!」
『そんなとこって…ベランダの手すりに座ってるだけじゃない』
「それが危ないんス!!」
『………』
「美雲っち…お願いだから、こっちに降りてきてほしいッス」
『…なんで』
「美雲っちにもしものことがあったら、俺はこの先生きていけないんスよ」
『有り得ないわね。繋がってるわけでもあるまいし、私が死んだって、黄瀬の心臓が止まることはないわ』
「止まるんスよ。心臓じゃなくて、心が」
『………』
「たとえ身体が生きていたとしても、心が死んだら…それは屍と変わらないッス」
『………』
「俺にとって、この世界で何よりも生きる価値をくれるのは美雲っちだけッスよ。だから…死なないで」
『…意味、わかんない』
「俺は美雲っちが好きッス」
『…それ、いつも言ってるね』
「毎日言いたくなるくらい、美雲っちが好きなんスよ」
『…私は、嫌い』
「俺は大好きッス」
『大嫌い』
「誰よりも、何よりも…俺は美雲っちが好き。愛してるんスよ」
『っ…』
「そうやって、誰かを傷つける自分も、死ぬ勇気がない自分も、なんの取り柄もないと思ってる自分も、全部全部自分のことが大嫌いな美雲っちも含めて…俺は、大好きなんス」
『な、んで…』
「美雲っちは、自分に良いところがあるなんて思えない。世界にいらない、必要ない存在だと思ってる。だから俺の告白が受け入れられないんスよね?」
『っ……』
「自分のどこが良いのか。俺が好きになる要素なんてどこにもない。そうやって自分のこと否定して、俺を遠ざけてる。…でも、違うんスよ。
誰かを…俺を傷つけてることに苦しんでるあんたも、自分の言動を直せない不器用なあんたも、死にたい死にたいと願って心の奥底では助けを求めてるあんたも、全部全部…俺は愛しい」
『なに、言って…』
「取り柄がない?良いところがわからない?だったら俺が教えてやるッス。今まで見てきた美雲っちがどれだけ優しくて、可愛くて…愛おしい存在なのか。俺が片っ端から教えてやるッスよ」
『黄瀬…』
「美雲っち、俺が受け止めるッス。あんたの優しさも、寂しさも、苦しさも、辛さも、楽しいことや嬉しいことだって、俺が教えてあげる。だから…一緒に生きよう。美雲っち」
『っ…ほん、とうに?ほんとうに受け止めてくれる?教えてくれる?』
「もちろんッス」
『私…しつこいよ?重いし、諦め悪いし…面倒くさいよ?』
「望むところッスよ。言ったっしょ?そういうところも全部、好きなんスから」
『……もの好きだね』
「いいじゃないッスか。美雲っちの良いところを知ってるのは、俺だけで十分スよ」
『……ありがとう、涼太』








(!美雲っち今名前で呼んだ!?)
(呼んでない)
(いや、今呼んだッスよね!?)
(呼んでないし)
(絶対呼んだッス!あー何度名前で呼んでほしいと頼んだか!!やっと俺の頑張りが報われたッス!!)
(良かったね、黄瀬)
(ああ!!なんで名字呼びに戻ってるんスか!?)
(戻ってない。知らない)
(美雲っち〜〜!!!)
(…………その変なあだ名止めたら、呼んであげる)
(!!…そ、それって…)
(…帰る)

(あっ!ま、待ってくださいッス!!美雲〜!!!)

 
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