光の対価

□配達 4【生まれた信頼感】
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『んっ…』




目が覚めると、見知らぬ天井が目に入った。ふと暖かい温もりを感じて左手に視線を向ける。




『…ゴーシュ、さん…』




そこには、私の左手に自分の手を重ねてベッドに突っ伏して眠る、ゴーシュさんがいた。

それを確認した瞬間、驚きと嬉しさで胸がいっぱいになる。

今まで、アスター以外の誰かが目を覚ましたときに傍にいてくれたことはない。いつも一人でいた私には、ゴーシュさんが傍にいてくれたことがとても嬉しかった。


思わず、柔らかそうなその銀色の髪を撫でる。

起きてしまうかと思ったけど、疲れていたのかゴーシュさんは目覚めない。




『ありがとう…』




きっと、あのブッコロリの森から少年と自分を運んできてくれたのだろう。アスターが手伝ったとしても、大変なことに変わりはない。
怪我をした自分の右肩を見ると、丁寧に包帯が巻かれていた。




(どうしよう…)




自分はもう起きれるが、起きてしまえば必然的に彼も起きてしまう。かといって、ベッドに突っ伏したままの姿勢で寝かせるのは申し訳ない。

悩んだ結果、ゴーシュさんを起こさないようにそっと起き上がった。




『アスター、手伝って』




ベッドから降りて、部屋の隅でロダと眠るアスターを呼んだ。
アスターはすぐに動いてくれて、一緒にゴーシュさんをベッドに寝かせる。




『重い…』




15歳の自分と二つ年上の彼ではこんなにも違うのか。まあ、男性という理由もあるが、ベッドに寝かせるのはかなり苦労した。

それでも起きないのだから、普段から無理をしていたのだろう。

私は静かにゴーシュさんの眠る部屋を出ていった。

























「ソニア…?」




数時間ほど経った頃、ゴーシュさんが起きてきた。


部屋を出て気づいたが、どうやらここはキッチン付きの宿のようで、私は起きてから持ってきていた替えの上着を着て町に出た。

そこでいろいろな食材を買ってきて、たった今作っていたスープが出来上がったところである。




『おはようございます。ゴーシュさん』


「お、おはようございます。…って、何をしているのですか!?貴女は肩を…!」


『大丈夫です。ゴーシュさんのお陰で、痛みはありませんから』




そう言って微笑むと、ゴーシュさんは心配そうな、複雑そうな顔をした。どこまでも優しい彼に心が暖かくなる。

私はもう一度微笑んで、ゴーシュさんを席に進めた。




『朝食に、スープを作ったんです。食べませんか?』


「…いただきます」




苦笑して席に座ったゴーシュさんに、スープをお皿に盛り付けてテーブルに運ぶ。

どうぞ、と言ってスプーンを渡し、自分の分のスープを持って彼の向かいに座ると、ゴーシュさんは「いただきます」と言って食べ始めた。




「!…美味しい…」


『そうですか?良かった…』


「本当に美味しいです!ソニアは料理が上手なんですね」




笑顔で言われた言葉に、思わず顔が熱くなってしまう。

料理なんて、自分とアスター以外に作ったことがなかったから、誰かに料理を褒められたこともなかった。だから、ゴーシュさんの言葉が本当に嬉しい。

そこで、彼に手当て等のお礼を言ってなかったことを思い出し、とっさに口を開いた。




『「あの!」』


『!…あ、何でしょう?』


「いえ、先にソニアから…」




驚いたことに、最初の一言がゴーシュさんと被ってしまい、気まずい雰囲気になる。

けれど、いつまでも二人して黙ってる訳にはいかないので、お言葉に甘えて先に言うことにした。




『その…いろいろ、ありがとうございました。森でのこと、手当てをしてくださったことも…』


「!あ、いえ!気にしないでください。僕が勝手にしたことですから」


『でも、ゴーシュさんのお陰で私は今生きているんです。…ありがとうございました』
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