光の対価
□配達 1【アカツキの少女】
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―なぁ、おい!今日“あの”アカツキからBEEが配属されるらしいぜ!!―
―まじかよ!?まさか、ヘッド・ビー!?―
―いや、どうも違うらしい。何でも、アカツキで生まれ育ったって話だ―
―は?じゃあ何でわざわざ“こっち”に出てくんだよ!?―
―さあな。上の奴の考えることなんて知らねぇよ――…
「どこもかしこも、アカツキから配属されるBEEの話題でいっぱいね…」
「そうですね…けど、誰が来ようと僕は配達を続けるだけです」
ユウサリ地方――郵便館BEE-HIVE(通称ハチノス)。
そこは、AG(アンバーグラウンド)国家公務郵便配達員“BEE”(通称テガミバチ)達が集まる拠点。
広い建物の中、あちこちで立ち話をする研究者達やBEE達の噂話を耳にし、同職のBEE、アリア・リンクは隣を歩く幼馴染みであり同業者の、ゴーシュ・スエードに話しかけた。
二人は今、このハチノスの話題を独占する例の“アカツキから配属されるBEE”を館の入り口に迎えに行くところである。
いつも通り自分のペースを乱さない幼馴染みに、アリアは小さくため息を吐く。
「どうかしましたか?」
「え?」
「表情が堅いようなので」
気にしてないようでいてきちんと周りを見ている彼に、彼女はぎこちなく微笑んだ。
「そりゃ、表情も堅くなるわよ。相手は政府要人や上流階級の人間が暮らす首都、アカツキから来たのよ?」
ここAGでは、夜が明けない。
そのため、人工太陽が空に浮かんでおり、その太陽に一番近い場所が首都、アカツキだ。
彼女の言う通り、“選ばれた者のみ”が暮らすことの出来る場所。
そんな場所から来る人間に、BEEとはいえ地位的には一般市民の自分がどう接すればいいのか。
そんな苦悩がありありと見てとれる彼女の表情に、ゴーシュは笑って落ち着かせるように言った。
「大丈夫ですよ。いくら上流階級だからって、同じ人間ですから」
「慰めにもならないわ」
はぁ、と肩を落とすアリアだが、入り口はすぐ目の前に迫っていた。
ゴーシュは一度彼女に視線を送り、深呼吸をしたアリアが頷くと扉を開く。
その先に待っていたのは、タイミングよく馬車から降りてくる、二人より少し幼いBEEの制服に身を包んだ少女だった。