光の対価
□配達 3【少女の秘密】
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「ソニア…ありがとうございます」
『え?』
「それでも、貴女は僕を助けるためにアスターの能力を使ってくれた。…それだけでも、とても感謝しています」
そう笑って感謝の言葉を述べると、彼女はまた目を見開いて驚く。それから、今にも泣き出しそうに表情を歪めて…僕は慌ててしまった。
「っ!ど、どうしました!?」
僕の腕を離して両手で顔を隠すソニアに、今度こそ悪いことでも言ってしまったのかと考える。
こんなにも、誰かに自分のペースを乱されたのは初めてだった。
『っ…ごめん、なさい…。私、そんな風に言われたことなくて……。
あのときは、ゴーシュさんを助けたい一心で…何も、考えてなかったから…』
わずかに震える声で言われた彼女の言葉に、嬉しさで胸がいっぱいになった。
今までの経験も、その後のことも考えられないくらい必死に、僕を助けてくれた彼女に言葉では表せない感情が胸の奥を暖かくする。
僕はソニアの手を取り、涙で揺れるその碧い瞳を見つめて言った。
「本当に…ありがとう、ございました。ソニア」
『っ!…いいえ、こちらこそ!』
そうして初めて、彼女は警戒心を払った満面の笑みで笑ってくれる。
ソニアの笑顔は、人工太陽の輝きよりも眩しく、美しかった。
『心弾装槇!――碧舞!!』
―キィイィイイイン!!
ブッコロリの森の横道を、二人でアスターに乗って進むと鎧虫が襲ってきた。
地面を走るロダと、少し上空を翔るアスター。お互いのディンゴと上手く連携しながらの鎧虫退治は難なく進む。
「もうすぐ、レントの町に着きますね」
『はい。…このまま、一気に進みましょう』
そう言って彼女が自身のディンゴに指示を出そうとしたとき…。ロダとアスターが同時にブッコロリの森の方を見た。
それから、何かを訴えるようにお互いの主人に吠える。
『アスター?何かあっ―、』
彼女の言葉が途切れ、森の方からわずかに人の声がした。
何かを叫び、逃げている子供の声。
『「!!」』
それを聞いた瞬間、ディンゴ達が何も言わなくても理解したように動いてくれた。
ロダは全速力で森に駆け込み、アスターも僕達を乗せたまま今まで以上にスピードを出して森に向かう。
緊張した面持ちで二人して先を見つめていると、鎧虫に襲われている子供を見つけた。