奇跡が起きた場所

□第一章―ヤクソク―
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―あれは幻だったのか。
「彼」と出逢って「あの話」を聞くまでは「俺」はずっと「幻覚」を見たのだと思っていた。

―そんな時に交わした「約束」―
―その「約束」で、「俺」は生き続ける事になったが、後悔はしていない。

☆ ☆ ☆

―どうして、こうなったのか―

その記憶は当時の頭に受けた損傷と、「思い出したくない記憶」と処理されたから、はっきりとは思い出せないが、「あの日」は珍しく来客があって喜んだ記憶が微かに存在している。
歳が違い過ぎてあまり遊んで貰った記憶が無いが、「僕」の兄である、「まー兄ちゃん」は「その来客」と良く遊んで貰っていたらしい。
まだ当時幼かった「僕」は、兄の雅人(まさと)の事を「まー兄ちゃん」と呼んでいた。
黒髪に黒い瞳の地味な「僕」とは違って、元から明るい茶の髪と瞳で、活発ながら明るく、運動が出来る兄は近所でも、学校でも人気者「だった」為に、それが「僕」の自慢だった。

内気で、活発とは程遠い「僕」をからかいも、可愛がりもする6つも歳上の兄の背中を追うだけに一生懸命だった「僕」は、その「来客」と遊んだ記憶は数回しかない。
近所に住む幼馴染みであり、家族絡みの付き合いがあった…確か下の名前は「健(たける)」とか言った筈だ。
まー兄ちゃんより2つか3つ上の面倒見は良いけれど、ちょっと近所からは良く言われてはいないとか話は聞いた記憶がある。
母親が健の母親と幼馴染みか、同級生とかで、家族絡みの付き合いとか、そんな話を聞いた事があるが、何せ8年も前の話だからあやふやになってしまっている。

高校に上がって、すっかり疎遠になったと思っていた、そんな5月の晴れたちょっと汗ばむ、そんな日曜日の午後に突然、健ややって来た。
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