愛盾夢

□あの音にわたしは夢を見る
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「おう、ありがとな」


お礼を言われたのはすごく嬉しいんだけど

なんでかな?

すごく切ないよ。


だって当たり前じゃない。

大好きな妖一のためなら、そんな事当たり前じゃない。


『ありがとう』


なんて言わないでよ。

私はもっと妖一に近付きたいんだから。






「どうした?」


そんな急に聞くから


「ううん、なんでもないよ」


そうやって無駄な意地を張ってしまうから

私はいつまでも友達でも恋人でもない立場なのね。


「そうか、じゃあな」


そんなあっさりと別れを告げるから


「うん、ばいばい」


また明日ねとも言えずに、私から笑顔が消えてしまうの。

こんなの私らしくもないわ。





それでもね

こんな私だけど

そんな妖一だけど

私は妖一のことを信じたい。信じていきたい。

だけど、そんな風に願えば願うほど

ほら、また切なくなってくるの。



妖一の香り、うっかり忘れかけてた。

突然あなたの香りが香った気がして、思い出したの。


今思えば、それがきっかけだったのかもしれない。






「愛してる」



突然の告白はあなたの香りを思い出した直後で

私の中間地点の立場は、はっきりと分かれた。

だってそんな素敵な告白を、私が断ると思う?


「ねぇ、私も。でも妖一」


愛してる よりも 大好き のほうがずっと妖一らしいんじゃない?


「妖一。私も、大好き」


これからの限りある時間はあなたと過ごしたい。

妖一との温かな未来を どうか手にしたい。


願わくば、淡くほろ苦い 私たちの味を…


宇多田ヒカル「Fraver of life」

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