アイアンリーガー
□見えるもの見えないもの
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「キアイ・リュウケンはいるか!!」
突然練習場に響いた大声が、シルキーの言葉の続きを完全に掻き消した。
何事かとその場の全員が周囲を慌てて見回す。
声の主はすぐに見つかった。その者は道路に面している壁の上に、腕を組みながら立っていた。
「ナッカラー……」
リュウケンと同じく空手リーガーのナッカラーである。
「いるけど……あ、シルキー少し待ってて」
「あ、ああ」
リュウケンはナッカラーの方へ駆け出した。ナッカラーも気付いて壁から飛び降り、歩み寄る。
「よう」
「こんにちは」
「おう」
「うん」
「……」
「どうしたの?」
「……」
「?」
ナッカラーはしばらく何も言わずにリュウケンをまじまじと見ていた。見られている当人は怪訝そうな顔で首を傾げる。
――やがてナッカラーはふっと苦笑いを浮かべた。
「いや、いい。出直すことにしよう」
「えっ?」
当惑するリュウケンを尻目に、ナッカラーは来た時と同じように壁を越えて消えた。
「なんだったんだ?」
エドモンドは呆れた表情でリュウケンを見た。しかしリュウケンにだって何がなんだか分からない。リュウケンはかぶりを振った。
「よう、シルバー! 今日も元気に練習してるか!」
拍子抜けから立ち直らないうちに、今度はゴールド三兄弟が乱入してきた。
「来るたび来るたび同じ声のかけかたするな、アーム」
マグナムが苦笑しながら言う。
「気にするな。なんだっていいじゃねぇか」
アームも同じように苦笑しながら答える。
「今日はウインディ来てないのか?」
フットは一番近くにいたシルキーにそう話し掛けた。
「っていうか、来る方が珍しいよ。この前は運が良かったんだよ」
「そうか……」
フットは少し残念そうに肩をすくめる。
「そういえば、他の奴等は時々来るのか?」
とマスク。
「うーん、GZ以外なら。あ、でも、十郎太は来てないな」
シルキーはやや寂しそうに答えた。
「そうそう。多分、山に篭ってんだろうーぜ」
とボビーが笑いながら言う。
「そういう言い方はないだろーに」
とカール。
「え、でも本当にある得るだろ?」
とボビーは言い返す。
「だとしても、もう少し言い方ない? お前が言うと少し馬鹿にしてるように聞こえるよ」
「えー。そんなつもりはないんだけどなぁ」
「まぁまぁ。別にいいじゃねぇか。そこで言い争いすんなや」
笑いながらフットが仲介に入った。別に言い争いしてるワケじゃないんだけど、と思いながらもボビーとカールはフットに謝った。
「さーて、野球の練習してたんだろ? 暇だったから俺達も手伝ってやるよ」
「だから、同じセリフ使わないで、簡潔に野球の練習をしようって言えばいいだろう?」
アームの言い方にまたもマグナムは苦笑しながらつっこむ。今度はアームは笑っただけだった。
シルキーはちらりとリュウケンに視線を向ける。
リュウケンはマスクに引っ張られてグラウンドへ駆け出すところだった。