エクスカイザー

□命の、いと重きこと
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 ――ダイノガイストが死んだ。

「なん……だ、と……?」
 プテラは呻いた。
 険しいオーラを放って立ち尽くすエクスカイザーを凝視して。
「なっ……ナメたことヌかしてんじゃねぇぞ! ボスが死ぬわけないだろうが!!」
 ホーンが怒鳴る。
 エクスカイザーは静かに言葉を続けた。
「本当だ……厳密には、私との勝負に負けたと思ったダイノガイストが、自ら命を太陽に投げ出した」
 この命は、何者にも渡さない――そう言って。
「……てめぇっ!!!」
 怒りを露にホーンがエクスカイザーに飛び掛った。
 伸ばした手が、指先が、エクスカイザーの目先で空を掴む。ホーンの体は己が押し込められた牢の格子に遮られた。
「畜生っ! よくもボスを!!」
 絶叫に近いホーンの怒声を、エクスカイザーは間近で浴びる。
「ボスが……死んだ……」
 アーマーがうわ言のように呟いた。
「てめぇが追い詰めたんだろ……てめぇがやったも同然だろうが……っ!」
 普段静かなはずのプテラの怒りが、徐々に鮮烈な赤みを帯び始める。
「いかな宇宙警察と言えど、勝手に命を獲っていいのかよ!? 何様のつもりだてめぇ!!」
「ああ、そうだな――すまん」
「!?」
「エクスカイザー」
 思わぬ相手からの思わぬ謝罪に、ガイスターは言葉を失った。側にいたスカイマックスが驚いて名を呼ぶ。
 エクスカイザーは己が発言を取り消すようなことはしなかった。居心地の悪い沈黙の中、踵を返して牢から離れる。
 後方からサンダーの問いが聞こえた。
「ボス、死んだのか?」
 今更ながら状況を認識して仲間に尋ねる。誰も、答えなかった。
「ボス、もう会えないのか?」
 やがてサンダーの声からも悲痛な響きが滲み始めた。そのワンテンポ遅れた言動と感情が、尚更事実の無情さを仲間達に思い知らせる。
「ふっ……ふざけんな! ボスが太陽の光如きで死ぬもんかよ!!」
 ホーンが叫んだ。事実を否定するように。そして、願うように。
「これから……俺達どうしたらいいんだ……」
 アーマーが呻く。その頭を「勝手に殺すな!」とコウモリがド突いた。
 ――エクスカイザーは牢屋を出る手前で足を止めた。
「お前達にとって――ダイノガイストは“宝”だったか?」
「ああ……?」
 背中で、ガイスターの注意が己に向けられたのを感じる。エクスカイザーは答えを待った。
 やがて。
「……んなワケねぇだろうが」
 プテラが答える。
「……」
 エクスカイザーは密かにため息をついた。所詮、“そういう”関係でしかないということなのか……
「ボスを金で計れるわけねぇだろ! ふざけんな!」
 ホーンの叫びが牢屋にこだました。
「そうだ、そうだ! ボスは金で買えないんだぞ!!」
 サンダーも続く。
「てめぇ、どれだけ俺達をコケにする気だ……?」
 プテラが殺気を込めて言った。
「……そうか」
 牢内にいながらも、ガイスター達の気迫に陰りがない。エクスカイザーは微かに笑みを浮かべた。そして以上何も言わずに牢屋を後にした。
「エクスカイザー、一体何を考えてるんだ?」
 後と追いかけてきたスカイマックスが尋ねる。エクスカイザーは肩をすくめて見せただけで、答えはしなかった。
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