アイアンリーガー

□女の子と野暮
1ページ/3ページ

 綺麗に磨かれた大きなガラス越しに、その姿はやけに映えて見えた。
 純白のウエディングドレス。
 基本のデザインはシンプルだが、ふんだんに使われたレースが華やかさを演出している。それでいて繊細さは失われず、更にヴェールが神聖な雰囲気を醸し出しており、女性の晴れ舞台を飾るに充分な存在感だ。
 素直に綺麗と言える。
 ルリーは苦笑した。結婚に恋をするとはよく言ったものだ。憧れはあるけれども、今はまだ途方もない夢。自分がこのドレスを着た姿を想像し、何故だか気恥ずかしい思いに捕らわれてしまった。
「ウエディングドレスか」
「!?」
 突然かけられた声に、ルリーは慌てて振り向いた。
「ゴ、ゴールドアーム……」
「よう、お嬢ちゃん」
 ルリーの視線を受け、ゴールドアームは軽く片手を上げて応える。ルリーは「こんにちは」と消え入りそうな声で挨拶を返した。
 非常に恥ずかしいところを見られてしまった……ような気がする。逃げ出したい気持ちを抑えられたのは、シルバーのオーナー故の屈しない精神のお陰であろう。
 しかし無理矢理浮かべたぎこちない笑顔だけはどうしようもなかったようで、それを見たアームが「どうした?」と首を傾げる。
「お嬢ちゃんじゃなくて、ルリーよ」
 リーガーに微妙な乙女心など解るわけないだろうことをいいことに、ルリーは本心を隠した。
「ああ、そうか、悪いな……あー、ルリーオーナー」
 言い慣れない呼び方に、アームは苦笑いでごまかす。なんとか話は逸らせたと、ルリーは内心ほっとした。
「やっぱり人間の女ってのは、こういうのに憧れるもんなのか?」
 アームは改めてウエディングドレスを見上げて尋ねた。内心の動揺はごまかせたものの、やはりその話題からは逃れられないかと、ルリーは密かにため息をつく。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ