アイアンリーガー
□星の歌
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月の丘から手を取り合って飛び降りた
きっと次は私の番
そして貴方に別れを告げた
次はそう、貴方の番
それでも星が歌わぬのなら
せめて私に祈りを下さい...
「GZが連れ帰った内の一人なの」
ステージに目を向けたまま、小声でルリーが言う。一瞬言っていることが分からなくて、クリーツは演奏から意識を逸らした。
「……あのロボットが?」
思い至って尋ねる。そう、とルリーはうなずいた。
ステージで歌っているのは、女性型のロボットだ。観客は人間もリーガーも一様に聴き入っている。
ここから眺めるその景色は
まるで咲き乱れる色とりどりの花のよう
忘れられた亡骸は
やがて大地となって
意味なき礎となるのでしょう
小さなライブバー。客の入りは7割といったところか。その片隅のテーブルに、ルリーとクリーツはいた。
「では、元」
アイアンソルジャー。
「うん。戦争をやめたかったけど、逃げることもできなくて、ずっと戦ってたって」
「そうか……それで“こんな”歌詞を書くのか」
見渡す私は祈りを知らない
この世に神はいるのでしょうか
目を閉じ私は涙を持たず
この地に救いは訪れる?
「この歌を聴いた、一体何%のお客さんが、歌詞の本当の意味に気付いてるのかな……」
「どうだろうな……」
戦場に立つ以外に道がなかった者の悲痛な叫びを、何%の観客が正しく理解するだろうか。
「いつになったら、戦争が終わるんだろう……」
「……」
ルリーの問いに、しかしクリーツは答えなかった。頭に浮かんだ答えの全てに、未来がなかったからだ。そんな殺伐としたものを、少女に突き付けたくはない。
ルリーはそれっきり喋らなかった。ただステージを見つめて歌に聴き入る。
真実を知りながら、しかし一個人ができることはとても小さい。少女はそれを知っているのだ。
そして、歯がゆいのはクリーツも同じだった。
ここから眺めるその景色は
まるで咲き乱れる色とりどりの花のよう
忘れられた亡骸は
やがて大地となって
意味なき礎となるのでしょう
見渡す私は祈りを知らない
この世に神はいるのでしょうか
目を閉じ私は涙を持たず
この地に救いは訪れる?
月の丘から手を取り合って飛び降りた
きっと次は私の番
そして貴方に別れを告げた
次はそう、貴方の番
それでも星が歌わぬのなら
せめて私に祈りを下さい...