アイアンリーガー

□フリージング・ハート
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 ゴールドアームは歯がゆい思いをしていた。
 ライジングブラストで一試合完投できない。
 手に入れて間もない魔球だ。エネルギー消費やパワーの微調整がまだ完全にできないのである。
 監督のブラックマンからはただの直球も使うよう指示されているが、試合でなければできない訓練もあると言ってアームは聞かない。そして結局右腕がオーバーヒートを起こして三男のゴールドマスクと交代を余儀なくされる……ということを繰り返している。
 しかもアームのその不安定な状態は、チームメイトにまで影響を及ぼしていた。
 アームの気持ちも分からなくはないが、彼の体が心配で気が気ではなかった。試合に集中できない者も出てくる始末。
 結果、ダークキングスは実力を全く発揮できないでいた。更にタチの悪いことに、アームはそのことに気が回らないでいる。弟二人は兄を信じて何も言わないし、イライラして常に殺気立っているアームに苦言を言える勇気ある者もいない。試合そのものは勝利しているものの、天下のダークキングスの試合としては無惨としか言いようがない。

 ――そんなわけで、ある日アームがライジングブラストでフォアボールを出した様を見たブラックマンは、試合終了後とうとう……キレた。
「アーム、次の試合スタメンから外すからな」
「なっ……!」
 これにはアーム本人は当然、チームメイトも驚いた。あの、ゴールドアームを試合には出させないと言うのだ。そういうこともありえるのだと、妙に感心している者もいる。
「冗談じゃない!! 何度も言ってるだろう! 出力の調整は実際に一試合通してみねぇとできないんだ!」
「それでどれだけ周りが迷惑してると思ってるんだ! 毎回右腕ぶっ壊すだけでなく、無様にフォアボールまで出しおって!!」
「ぐっ……」
「他の奴等はお前のことが気になってプレイに身が入らんし!」
 アームは驚いてメンバーを見回す。全く気が付いていなかった。仲間達は困った顔でアームをうかがい見ている。
「明日は欠場だ! その使い慣れた右腕を取り替えたくなかったら、明日一日集中メンテだ! いいな!!」
「っ……」
 いつの間にかスターティングメンバーから外れるだけの話が欠場に発展している。しかしアームは何も言い返せなかった。仲間が試合に集中できないと知った以上、最早チームに迷惑をかけるわけにはいかないし、右腕を失いたくもない。そしてブラックマンの彼らしからぬ気迫に呆気に取られたのも事実だった。
「……でもよ、マスクの直球だけで明日の試合勝てるのか? 相手はシルバーだぜ」
 困惑した顔で兄と監督のやり取りを見ていたフットが言う。
 ブラックマンはニヤリと笑った。
「それは大丈夫だ。考えがある――」
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