アイアンリーガー
□始動
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「お前、シルバー辞めて、他のサッカーリーグに移るんだってな」
お茶代わりに出したオイル片手に、ゴールドマスクが問いかけた。
シルバーキャッスルの基地の前に横たわる港。そこに彼と共に立っていたマッハウインディは肩をすくめた。
「兄貴から聞いたのか」
ああ、とマスクはうなずく。
「それを確認しに、わざわざここまで来たってのか」
「まぁ、ね。ちょっと……気になったからさ」
そう言ってマスクはオイルを一口含む。
「あんなにシルバーの為に頑張っていたのに、あっさりと決断したなぁと思って」
するとウインディは内心うんざりしながら苦笑した。
「よく言われるよ。そんなに俺、シルバー抜けちゃ悪いかよ?」
「悪くはないさ。ただ、何がどうなって、そういう結果になったのか知りたいだけだよ」
「皆そう言う」
「あ、そ……」
確かに、UN社に奪われたシルバーキャッスルを取り戻すために奮闘したウインディの姿を目の当たりにしていた者達は、意外に思うだろう。だがUNシルバー対真シルバーの試合に深く関わった者達は気付いたはずなのだ。あの運命の対決が何をもたらしたのかを。
だからマスクだって分かっているモンだと思っていたのだが……ウインディはうかがうようにマスクを見た。マスクはウインディにまじまじと見られ、不思議そうに首をかしげる。
――マスクには、もう少し時間が必要なのかもな。
「……何だよ?」
マスクに言われ、ウインディは「別に」と答える。
「さて、質問の答だが……俺はサッカーが好きなんだよ。だからいろんなサッカーをもっと経験して、もっと強くなりたい。そして」
世界の大舞台で最高のサッカーを披露したい。
あの試合でやっと気が付いたから。夢は更に大きく膨らんでいった。
未知の世界への期待が心を熱くさせる。新たな道が開けた――
「だからシルバーを抜けるのさ」
分かったか? と目で問えば、マスクは「そうか」と微笑む。とりあえず疑問は解けたようだが……
「……なぁ、ゴールドマスク」
「何?」
「お前は……これからもダークキングスで頑張るんだよな?」
自分が心の中で考えていることを悟られぬように視線を外し、できる限り遠回しな言い方でウインディは問いかけた。
俺はサッカーリーガーだ。サッカーが大好きだ。だから無限の可能性を求めて歩き始める。
だけど、お前は?
マスクはなんのために野球をする? 兄と共にいるためか? 兄を助けるためか?
友に、ライバルに、自分と同じ更なる高みを求めるのは、俺の勝手な押し付けになるのか――
「もちろん」
マスクは即答する。ウインディは心に一抹の寂しさが湧くのを感じ……
「――今のところはまだ、ね」
「えっ?」