アイアンリーガー

□悪意の象徴
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 見慣れぬメンバー。
 見慣れぬ行為。見慣れぬ、銀城のマーク。
 何があったのかは分からない。
 明らかなのは、何者かがシルバーキャッスルを変えてしまったこと。
 何者かが、白銀の名に泥を塗った。
 正々堂々を信条としていたはずのチームは、今やラフプレイの最先端。
 その陰に潜んでいるのは……人の、悪意。



「おいっ、マスクは大丈夫なのか!?」
 スタジアムから直接財団ビルのメンテナンスルームに運び込まれたゴールドマスクを指差し、ゴールドフットがメンテナンススタッフに食ってかかる。
 野球開幕戦でギャレットの突進をまともに受けたマスクは、それからずっと沈黙したままだ。そんな彼を長兄ゴールドアームが苦い顔で見下ろしている。
「お、落ち着いてゴールドフット。大丈夫だから」
 フットの剣幕に気圧されながら、チーフはなんとかなだめようとする。
「慣れない衝撃に、一時的に回路が封鎖されただけだから。ボディに損傷はないよ」
「そうなのか?」
 予想外の返答をされてフットは拍子抜けした。スタジアム付きのメンテルームではなく、財団ビルに直接搬送されたから、ただ事ではないと思っていたのだ。
「当然だ。アイアンソルジャーのたかがジェット攻撃に、ダークが誇るゴールドシリーズ最新型が簡単に潰されるものか」
 直接ビルに運んだのは、ダークキングスが帰る気満々だったからだ。二度手間にならぬよう、試合後のメンテナンス含め、まとめて済ませるつもりだったのだとチーフは説明する。
 それを聞いたフットは安堵のため息をつき……ふと我に返った。
「何? アイアンソルジャー!?」
「シルバーの新顔共はソルジャーなのか」
 アームがチーフに尋ねる。
「そう。UN社はソルジャー開発もしているからね。後ろにはユニバーサル商会がいる。以前のダークと同じことをシルバーでやろうとしているのさ」
 チーフは答え、鼻で笑った。
「ソルジャーはうちのお株でもあったんだ。ゴールドシリーズをなめるなっての」
 フットは舌打ちした。
「ソルジャー……ソルジャー、ソルジャー、ソルジャー!! いったい俺達ロボットをなんだと思ってやがるんだ!?」 
「兄貴うるさい……」
「なんだと!? ……あ」
 いつの間にかマスクが目を覚ましていた。
「大丈夫か、マスク」
 アームが声をかけると、マスクは「ああ」と静かに答える。
 フットはいぶかしげに弟の顔を覗き込んだ。普段のマスクと違い、態度が冷めている。兄達を一瞥すらしない。
「マスク?」
「……ずいぶん機嫌が悪そうだな」
 アームが苦笑いを浮かべて言う。するとマスクは「えっ?」と不思議そうな顔をした。
 だがすぐに一人納得して顔をしかめ、ため息をつく。
「……うん。たぶん、腹立ってんだろうな」
 それを聞いてフットは呆れた。
「なんだそりゃ。自分のことだろうが。そんな他人事みたいに」
「新シルバーのやり方にか?」
 アームが訊くと、マスクは微かに首を振る。
「それもあるけど……何よりも、あの程度の攻撃で沈んだ俺自身に」
「……そうか」
 それだけを言い、アームは淡く笑みを浮かべた。弟の思いが分かったから。
「次は大丈夫だよ。体が覚えたから」
 チーフの言葉を受けても、マスクの表情は厳しいままだ。
「体は関係ねぇよ」
 そう呟くマスクに、チーフは分かってるけどねと苦笑いを浮かべる。
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