トランスフォーマー

□過失
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 ガンアームの銃口がコンボイを捕らえた。しかも、ほぼゼロ距離でだ。
「!」
 思いがけず始まった、レーザーウェーブとコンボイの一騎打ち。観客はいない。タイミングという時の気まぐれにより、双方の戦士達は居合わせなかったのだ。もう少し時間がたてば両者出揃うだろうが、今はまだ二人だけであった。
 そうして闘いは、今度はなんの気まぐれだろう、まさにレーザーウェーブに軍配を上げようとしていたのである。
 ――しかし。
「……」
 折角の好機に、レーザーウェーブは動かなかった。意図があったのではない。完全に停滞したのだ。
 その隙をコンボイは見逃さなかった。彼はすぐに手で銃口を払い除け、タックル。
「がッ!」
 かわす間もなく、まともに攻撃を受けたレーザーウェーブは勢い良く吹き飛ばされ、後方の建造物に叩きつけられた。
 コンボイは格納していたライフルを手にし、レーザーウェーブに照準を定めながら間を詰める。衝撃により身体機能が一時的に麻痺したレーザーウェーブは避けられない。
「何故、撃たなかった?」
 今度はコンボイがほぼゼロ距離で敵を捕らえ、問うた。もしレーザーウェーブが間髪入れずにコンボイを攻撃していたら、彼は深刻なダメージを受けていただろう。……いや、レーザーウェーブの攻撃力を考えれば、死んだとておかしくない。
 しかし、レーザーウェーブは攻撃しなかった。
「レーザーウェーブ」
「……貴様こそ、何故撃たぬ。余計なことに意識を取られて機を逃せば、後で痛い目を見るかもしれんぞ」
「今のお前のようにか」
「……」
 今のレーザーウェーブに突き付けられた銃口を払うことはできない。紫の機体をまっすぐ見据えるコンボイに先のレーザーウェーブのような隙はないし、シャットダウンした回路は未だ復旧せず、体が思うように動かぬのだ。
 形勢逆転、レーザーウェーブは窮地に立たされていた。
「撃つならさっさと撃て。撃たぬなら退け」
 それでもレーザーウェーブは臆せずコンボイを見返して言う。逃れる算段があるからか、それとも死を恐れていないのか、コンボイには分からない。コンボイはしばしレーザーウェーブを見つめ――内心で呆れたようにため息をつき、トリガーを握る指に力を込めた。
 その時。
「むッ」
 建造群の間からコンドルが現れ、コンボイに光弾の洗礼を与えた。不意を突かれたコンボイは、雨のように降り注ぐそれらをまともに浴びてその場から弾き飛ばされた。途端に危地から解放されたレーザーウェーブが態勢を立て直し、レーザー砲にトランスフォームして追撃をかける。コンボイは地面を転がって間一髪でかわした。
 2対1、いささか分が悪い。コンボイは戦闘にこだわることはせず、トレーラーにトランスフォームしてその場を離脱した。コンドルは追わなかった。追えばサイバトロンの陣地付近で狙撃されると分かっている。
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