トランスフォーマー

□仕事+アルコール中毒=要注意人物
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 セイバートロン星デストロン本部基地の新しい防衛プログラムを思いついたと言って、メガトロンが自室にこもってから幾日が過ぎただろう。そろそろスタースクリームがニューリーダー病の発作を起こすのではなかろうかという頃、破壊大帝はやっと姿を現した。
「メガトロン様!」
「あぁ、レーザーウェーブ」
 廊下の角で出会い頭に遭遇した防衛参謀に、メガトロンはちょうど良かったと声をかける。……レーザーウェーブの安堵したような心配しているような声音には気付かない。
「D区画の防衛プログラムをこの通りに書き換えろ」
 そう言ってメガトロンは手にしていた小型モニターパネルを差し出した。了解しましたとレーザーウェーブはそれを受け取る。
「で、修繕は何処まで進んだ?」
「87%まで完了しています」
 実はメガトロンが自室にこもる少し前まで、デストロン軍は本部D区画でサイバトロンと交戦していた。そこに一時仮置きしていたエネルゴンキューブを狙われたのである。結果、エネルゴンキューブを一部持ち去られ、戦火で区画の半分以上を壊滅させることになってしまった。メガトロンはその修繕指揮をレーザーウェーブに任せていたのだ。
「御苦労。ふむ、思っていたより早く済みそうだな」
「はい、メガトロン様」
「引き続き頼むぞ」
「Yes, sir.」
 これで用は終わったとばかりに踵を返したメガトロン。だがそこではたと気が付いた。
「というか、お前ここで何をしている?」
 D区画を任せていたはずのレーザーウェーブが本部中枢にいる、おかしな話だ。
「申し訳ありません。スタースクリームの不穏な気配を察したサンダークラッカーから、メガトロン様の御様子を確認してきて欲しいと頼まれましたので」
「む」
 下っ端の自分が行った所で邪魔をするなと一蹴されて終わると思ったサンダークラッカーは、メガトロンの信頼あつい防衛参謀を頼ったのである。それを容易に想像できたメガトロンは少しばかりばつの悪そうな顔をした。全く以って否定できない。否定ができなければ咎めることもできぬ。
 しかしだからと言って、自分がやっていたことを責められるいわれもない。このままおとなしく黙り込んでいるのも癪なので……よし、後でスタースクリームに一発カノン砲をお見舞いしておこう。
「メガトロン様は一度何かに夢中になると、他の事が疎かになりがち。こもられるのは結構ですが、もう少し配慮なさって下さい。もしかして満足に休息も取っておられぬのでは?」
 ぎくり。
「……いや、そんなことはない。大丈夫だ。さすがの儂とて休息は必要だ。心配するな」
 嘘である。それはもう嬉々として熱中していた。だがそれがこの忠臣にバレれば小言が更に続きかねない。もしかしたら部屋に叩き込まれ、しっかり休むまで見張りに付かれそうだ。まだやらなければならないことがあるというのに、それは勘弁だった。
「……」
 しかしレーザーウェーブは信用しなかったらしい。しばしメガトロンを見つめ……
「失礼します」
 そう言って主の手を取り、握った。
「な、なんだ」
「……本当のようですね」
 どうやら体温を測っていたようだ。トランスフォーマーの体は稼動率が正常値を越えると冷却装置による排熱が追いつかず、過熱する。それは体の負担となり、回路が疲労を起こして不具合につながり、場合によっては電脳にまで影響を及ぼすのだ。
 多少、発熱している自覚はあったが、レーザーウェーブの許容範囲内だったようだ。メガトロンは内心ほっとした。まぁ、まだ元気だし、達成感もあってかえって爽快な気分なのだから、問題あるはずもないのだが。
「あまり御無理なさいませぬよう」
「覚えておく」
 レーザーウェーブは一礼して去っていった。さて用も済んだし、部屋に帰って軽く休んだら別のプログラムに取り掛かるとしよう。そう思い、メガトロンも来た道を戻った。
「メガトロン様」
「サウンドウェーブ」
 部屋の前にサウンドウェーブがいた。
「どうした?」
「スタースクリームが良からぬことを考え始めている。こもり過ぎだ」
「あー」
 そういえばカノン砲をお見舞いするつもりだったと思い出す。仕方ない、一休みする前に行ってくるか……とメガトロンが考えていると。
「む」
 突然サウンドウェーブがメガトロンの手を握った。コイツもか、と思った直後。
「……何故休まなかった」
 険しくなったサウンドウェーブの声。え、とメガトロンは首をかしげた。
「熱い」
「何ッ」
 そんなはずはない。だってさっきレーザーウェーブが――
「……」
 ま さ か。
 メガトロンは慌ててレーザーウェーブを追おうとした。
「ぐ」
 ところが体を反転させたところで視界が明滅し、
「メガトロン様!」
 そのまま意識がブラックアウト。ガシャーンッと盛大な金属音を響かせて、メガトロンは転倒するように前のめりに倒れた。
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