トランスフォーマー

□Time gose by.
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 取り込み中のメガトロンの代わりに、セイバートロン星にいるレーザーウェーブからの定期報告を受けていたサウンドウェーブ。
「レーザーウェーブ」
『なんだ?』
 おもむろに名を呼んだ、その後。
「お前、キモチワルイ」
『は!?』
「!?」
 突然の暴言に、吐かれたレーザーウェーブはもちろん、サウンドウェーブの後方で雑談をしていたジェットロンも驚いて濃紺の背中を見た。っていうか、罵る言葉は数あれど、よりにもよって「気持ち悪い」はあんまりじゃね? サウンドウェーブの傍らではフレンジーが呆れた顔で主人を見上げている。――サウンドウェーブは何故かレーザーウェーブには時折こうなのだ。
 しばし奇妙な沈黙が場を支配する。原因のサウンドウェーブは相手の反応を待っているのか、無機質な面相で微動だにしない。
『……ぷっ』
 やがて。
『ふっふふ、くくくっ……あはははは!』
「!?」
 レーザーウェーブが体を揺すらせて笑い出した。暴言を投げ付けられたにもかかわらず、とても愉快そうに。「え、ここ笑うとこ?」とジェットロン達がうろたえている。
「何がおかしい」
 一方、笑われて心外だったサウンドウェーブ、問う声こそいつも通り淡々としていたが、思い切り不満そうなオーラを発していた。もっともそれに気付いたのはカセットロンのフレンジーだけだったが。
『いや』
 レーザーウェーブはひとしきり笑った後、首を振って未だ付きまとう笑いの余韻を振り落とそうとした。それでもなかなか治まらないのか、しばらく喉の奥で笑っていたが、さすがにサウンドウェーブの不満オーラが感じ取れるくらいに強くなり、慌てて無理矢理気持ちを切り替えた。
『すまん。お前が相変わらずで嬉しくてな』
「……」
 サウンドウェーブはすぐに言葉の意味を正確に汲み取った。
「当然だ。お前にとっては400万年でも、俺達にとっては一瞬だ」
『そうだろうとも。お前達にとっては一瞬だろうが、俺にとっては400万年だ』
「……恨み節のつもりか」
『毒を込めたつもりはないが、そう受け取ってもらっても構わない』
 そしてレーザーウェーブはおかしそうに喉の奥で笑う。
『さて、話を戻そうじゃないか』
「逸らしたのはお前だ」
『お前が笑わせるようなことを言うからだろう』
「笑わせようとは思っていなかった」
『じゃぁ、どういうつもりだったんだ?』
 やっと本題に戻ってきた。一体なんなんだコイツ等の会話は、とジェットロンは呆れ顔である。そんな彼等にフレンジーは両手を広げて肩をすくめて見せた。
「400万年もの間、ずっとメガトロン様を待ち続けたことが理解できない」
 レーザーウェーブのその妄信的な忠誠心が、サウンドウェーブには気持ち悪いのだ。
「確かにな。俺だったらさっさと軍団のトップに座っちまうぜ」
 とスタースクリームが言う。下克上を常に狙っている彼からすれば好機以外の何物でもないだろう。
「コイツみたいに野心なくても、諦めるのに充分の時間だよな」
 とはサンダークラッカーだ。
「あんまり気にしてなかったが、言われてみりゃ確かに普通はできねぇよなぁ」
 スカイワープもうなずく。
『ふむ』
 地球組から注目を受け、レーザーウェーブは考える仕草を見せた。
『そう、かもしれん。お前達が言っていることは理解できる』
 ――だが、とレーザーウェーブ。
『考えてもみろ。我々は500万年もの間、同じ場所で同じ相手と戦い続けてきたんだぞ? 確かに待っている間の400万年は途方もなく長かった。比べるべくもないほどにな。それでもやはり、今更じゃないのか』
 あー、とサンダークラッカーが声をあげた。言われてみると確かに、とはスカイワープである。スタースクリームは腰抜けめと小声で吐き捨てたが、理解はしたようだった。
 そしてそれは、サウンドウェーブも一緒で。
『地球人は100年も生きられないのだろう? ということは時間の感覚も我々とは全く異なるに違いない』
 毒されたんじゃないか? とレーザーウェーブはからかうように言って、また小さく笑う。
 詭弁だ、とサウンドウェーブは思った。明確なリーダーの元に戦い続けた500万年と、リーダーの不在と不安の下に待ち続けた400万年は、全く異なるものだ。
 しかしそれでも否定の言葉が出なかったのは、同じ場所で同じ敵相手に500万年も戦ってきていたという事実に、一瞬怯んでしまったからであった。
 時間を捉える感覚がおかしくなっているのか。レーザーウェーブの言う通り、毒されているのかもしれない。
「でもさ、それでもやっぱり普通はできないと思うんだよなぁ」
 無反応のサウンドウェーブの代わりとばかりにフレンジーが言った。ただ彼自身は主人と違って純粋にそう思っただけのようだ。
 それに対し、レーザーウェーブも気分を害された様子もなく、いたって穏やかに答えた。
『ならば。メガトロン様への忠誠心は俺の誇りだ、褒め言葉として受け取っておこう』
 やはりコイツちょっと引っかかる。サウンドウェーブはそう思ったが、返される言葉が容易に想像できたので今度は口には出さないでおいた。



END
400万年待つってどんな感じなんだろう? と真剣に考えてマジで具合悪くなった人がここに(笑……えない)
なのでTF達の時間の感覚は全く違うんだろうな、と。……考えるまでもないか(笑)
待つ400万年とは比べるべくもないだろうけど、それでも戦ってきた500万年もそれはそれでスゲーなぁと思うのですよ。

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