トランスフォーマー
□wave-shock
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思いがけず訪れた好機を、スタースクリームが見逃すはずもない。コンボイとの一騎打ちでボロボロになったメガトロンを宇宙へ放逐、新リーダーを巡って始まったバトルロワイヤルにも勝利、長い間――本当に永い間――狙い続けてきた念願の座を手に入れた今、スタースクリームはすこぶる気分が良かった。
だが、だがまだだ。喜びの雄叫びをあげそうになる己の心をなだめつける。そう、なにせ最後の一仕事が残っているのだ。
デストロンが防衛参謀レーザーウェーブをひざまずかせる、という仕事が。
「メガトロン様はどうした? それに他の仲間達は」
地球から帰還したメンバーを見回し、レーザーウェーブが尋ねた。想像通りの質問をしてきた単眼にスタースクリームは内心で笑う。なんて単純、分かりやすい奴。いつも一言目からメガトロン様メガトロン様とやかましいったらありゃしねぇ。
あぁ、でも。
「メガトロンは死んだ」
もう奴はいない。スタースクリームははっきりと告げた。
「まさか、そんな」
「本当さ。俺“達”の目の前で、奴は宇宙空間の彼方に消えていったんだ」
なぁ? とスタースクリームは仲間――いや、部下達を振り返る。彼の後ろに並んでいたアストロトレイン達は何も言わなかった。……否定の色も見せない。
レーザーウェーブは古き同志に目を向けた。
「……」
サウンドウェーブも無機質な赤を返すのみ。だがそれでレーザーウェーブは悟ったらしかった。単眼の顔を伏せ、やがて呟く。
「そうか」
スタースクリームはおや? と思った。落とされた声音があまりにも平静だったからだ。動揺し、嘆き悲しむなら笑ってやろうと思っていた。刃向かうならば叩き伏せてやろうと思っていた。しかし。
「これからは俺がデストロン軍団のリーダーだ。コイツ等は既に俺を認めた。あとはお前だけだ、レーザーウェーブ。これからは俺様に忠誠を近い、俺様のために働け」
「承知いたしました、スタースクリーム様」
レーザーウェーブは平然とスタースクリームに頭を垂れたのだった。
素直に従うならそれに越したことはない。だがいささか拍子抜けなのも否めない。外野も予想外の光景に言葉を失っているようだった。
だが、まぁいい。
「いい心掛けだレーザーウェーブ」
覆すことのできない現実を前に、嘆きも足掻きも無駄だと瞬時に気付いたのだろう。防衛参謀という肩書きは伊達ではなかったということだ。
それならそれで好都合である。そういう手駒を手に入れたということなのだから。スタースクリームは最後の仕事を無事達成できたことに満足し、上機嫌で歩き出した。
さて、これから舞台作りをしなければならない。デストロン軍ニューリーダー:スタースクリーム様の栄光の物語のための舞台作りを――
スタースクリームは気付かなかった。
歩き出した列の最後尾に付きながら、サウンドウェーブが無機質な白いマスクの下で唇を歪ませ、狡猾な笑みを浮かべていたことに。