幻想水滸伝

□カレッカの誓い
2ページ/2ページ

「僕が工場行きのメンバーを発表した時、ビクトールとフリックが顔色を変えた。どうも……ハンフリーを気にしているみたいだった。心当たりがあるのなら、その辺の話を聞きたいんだけど……」
「……」
 やはり、とハンフリーは思った。なんと答えようかしばし思案する。
「……もしかして、カレッカに関係あるのかな……?」
「……貴方は解放軍のリーダーでいらっしゃいますから……知っておくべきことかもしれません……」
 ハンフリーは深く息を吐いた。
「私は……カレッカの襲撃に参加していたのです……」
 セイカイが息を呑む。
「何も知らされていなかったとはいえ……この手で罪もない人々を斬りました……気付いた時にはもう……」
 ほとんどが失われていた。
「そして怒りに駆られ、上官を斬りました……それで私は、帝国を追われる身となったのです……」
「そう……だったんだ……」
 ――しばし、沈黙が舞い降りる。ハンフリーにはセイカイが言葉を考えあぐねいているように見えた。別に何か言ってもらう必要はなかったが、それを告げるのも少年に悪い気がして、結局ハンフリーは黙っていた。
 やがてセイカイは「ゴメン」と呟いた。
「何か言おうと思ったんだけど……カレッカのことも、ハンフリーの辛さも想像するしかできない僕が、何を言っても薄っぺらな言葉にしかならないよね……」
「……いいえ……そのお気持ち、感謝致します……私は大丈夫です……いつまでも引き摺っているわけにはまいりませんし……それに、だからこそ……解放軍に参加しているのですから……」
 言葉とは不思議なもので――先程まで心が動かないことを苦々しく思っていたのに、今こうしてセイカイに心配させまいとして言った言葉が、心が動かぬ紛れもない理由に思えてきた。確かに実際いつまでも過去に苦しんでばかりはいられない。同じ過ちが二度と起きないように、そして国民が安心して平和に暮らせるように、戦っていかねばならないのだ。
「……そうだね」
 セイカイはうなずいた。
「……セイカイ殿も、現在大変な状況に身を置かれていらっしゃるというのに……お心遣い、痛み入ります……」
 先回解放軍を惨敗させた鉄甲騎馬隊を率いているのは、セイカイの父なのだ。しかもその前にはグレミオを失ったばかり。
 ――だがセイカイは苦笑いを浮かべ、
「父さんのことは大丈夫だよ。確かに眠れる心境じゃないけど、僕も生半可な気持ちで解放軍のリーダーをやっているわけではないからね」
 と力強く答えた。
「……その決意に敬服致します……」
 本当は辛いだろうに、なんと強い少年だろう……ハンフリーは心苦しかった。だがその気持ちをそのまま表しては、リーダーの決意に失礼なので、“敬服”という言葉に留めた。
「まぁ……皆も同じ決意で解放軍に参加してるんだから、偉そうなこと言えないけどね」
 照れ隠しにそう言ってセイカイは笑った。ハンフリーも淡く笑みを浮かべた。
「……勝とうね、ハンフリー」
「……はい」
「勝って、皆が平和に暮らせる国にしよう」
「はい……」
 国民が平和で幸せに暮らせる国を実現させるために。
 ハンフリーはカレッカの村中に目を向けた。そして、戦いが終わったら……いつかこの村の復興に尽力しよう、と思った。



END

一晩で突発的に作った小説です。
ネタは結構前から頭にはあったんですけど。
淡々と見えるように、文の書き方を少し変えてみました。
どうでしょう……?
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ