アイアンリーガー
□砂上の楼閣
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「……」
「空はイイなァ。知っていルカ? 宇宙デはリーガー同士が戦争ヲシてイるらシイ。アらカジめ心を消去されて」
マスクは驚いた。
「知ってんのか?」
宇宙の戦争を。アイアンソルジャーを。
「伊達に長ク生きていナイ。……そチラの方がドレほド楽か」
はぐれリーガーよりもアイアンソルジャーの方がマシだとスクラップは言っているのだ。マスクには、どちらの壮絶さも想像すらできない。
「やっト……ヤっと、終わレルんダ。誰二も邪魔はさセナい」
「……こんなの、納得できるかよ」
今この場でマスクにできるのは現実を呪うことだけだ。
「オ前にハ全く理解デキなイだろうサ、坊や。理解スル必要もなイ。元ヨり私を見ツケるべキでハなカった」
「……」
「オ前の行く道二ハ足掻く余地があル。オ前は“こンな所”に立チ止まルコとなく、振り向くコトもなク、突キ進ンデ行くべきナンだ」
……マスクは拳を握り締めた。食い縛っている歯が擦れて鳴りそうだった。
「オ前も今ハはぐれリーガー。だガ私達トハ全く次元が違ウ。関わルナ。忘レろ。さっサトここヲ立ち去るがいイ」
「……悔しく、ないのか。つらくないのか。終わるのが、怖くないのか……」
見ている自分はひどくつらい。マスクは絞り出すように問う。スクラップは即答した。
「悔シイさ!! 辛くなカッタ時などあルもノカ! だガそれモもう間モナく終わル。ザマァ見ろ!!」
アはハハははハはッ!! スクラップの歪んだ高笑いが荒野に響き渡る。はたして誰に叫んでいるのか――運命か、それとも自分にか。
「さぁ行ケ! 再び“奴等”がここヲ通ルぞ。誰デあロウが“奴等”ハ従ワヌ者全てヲ破壊して回ル。多勢に無勢、しカモお前ハもうリーガーに拳を向けラレまイ。当然、言葉ナド通ズる相手でハナい」
「っ……!」
考えるだけ無駄な葛藤がマスクをさいなむ。道は一つ。それを選択できない。
そうしている間に空気が変わった。歪んだ風の流れに騒音が紛れ込む。スクラップの言う“奴等”だ。
「さぁ急ゲ。私モもう終わル」
――マスクは駆け出した。逃げるように走った。逃げたくなかったが、逃げるしかなかった。
END
いろいろな事象を見て成長して下さい、ってことで。