02/03の日記

21:57
小咄「みらいいろ」
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睫毛にかかる優しい風を受けて、
瞼を開く、
70%の覚醒。

夜明けにはまだほんの少し、早い。
紫色の薄いヒカリが、寝入る彼の人の顔をぼんやり浮かばせる。

昨日、声を上げ過ぎたのか、
喉の渇きを覚えたラビが身を起こそうとする。
と、

肩に、軽い圧力。
柔らかく折れた腕は、
シーツごと自分を包んでいた。
素肌で眠っていたのに少しも寒くなかったのはこれのお陰だろう。
起こさないように、そっとシーツのトンネルから滑り出る。
ぱさり、
と腕がずれて、
あ、とラビは小さい声を上げてしまったが、
深い眠りの底にいる様子、
長い睫毛は開かなかった。
自分に暗示をかけるように人差し指を唇にのせて、
ぺた、静かにベッドから下りた。

冷たい水を身体に流し込むと、眠気はすっかり醒めてしまったけど、
そのまま起きているには、部屋の暗色が切な過ぎて。
もう一度無理に瞼を閉じようか、
ベッドに視線を戻す。


と。


ひらひら、ひらひら、と、
白い手が何かを探して、
宙を舞う。


起きた?
いや、
ティキの眼はまだ開いていない。

それでも、
ひらひらと、舞う手は、
自分の事を、探して、る?


力尽きてベッドへ堕ちる刹那、
ラビの手がそれを受け止めた。

冷たい手。

夜の間、ずっと自分を包んでくれていたのだろうか。
寒くないように。
寒くないように。
……逃げない、ように。
そして、
逃した、と思ったこの手は、意識のない主の代わりに、

探していた。
伸ばしていた。

ラビの元、まで。

そしてその手を取って、
ラビの指は、


人差し指に 「キヲク」
中指に 「キボウ」
薬指に 「キズナ」

を、重ねて、
固く固く、握られる。
指先が紅く染まるくらい、
しかと、固く。


その紅は、
幸せの絲か、
地に堕ちる血潮か、
どちらにせよ、


二人の、みらいいろ。


ベッドの脇にひざまずいたラビは、固く繋いだ手を、
唇へ、寄せた。
ラビは、眼を閉じる。

祈るように。

「……ラビ?起きたの?」

みらいいろの向こう、
ティキの瞳がこちらを見つめていた。
「何してるの?早くおいで、身体冷えちゃうよ…」

引き摺るように手を引いて、ラビをシーツの海に浮かべた。
ほらやっぱり冷たい、と、
絡まった足がこつん、と講義のよう小突いてきた。

「…でも、昨日は温かかったさ……ありがと」
「ん?ラビがいい子で寝ててくれたからでしょ?」

自分の意思とは関係なく?
優しい鎖はラビを繋いでいた?
それを裏付けるように、ティキの瞳に何の影もなかった。

「……そうか。うん、いいや、もう」
「え?何なに?」
「いいの、もう」

ラビの鎖で繋がれたティキの手は、
シーツに閉じ込められていた体温で、
更に紅く、染まる。

みらいいろに、染まる。

そして、祈る。
離れませんように。
離しませんように。

「……ラビ?」
言葉を閉じたラビを、
不安そうに見てるティキに、

ラビは、華のように笑って、

「も少し眠ろ?まだ早いさ、ね?」
不安を払いのける。

紫色が、白に変わってきても、
この紅は、変わらないで。

二人を繋ぐ、みらいいろ。


ティキも笑って、
「うん、一緒にね。……ほら、もっとこっちおいで、ラビ」

手を繋ぐ。

みらいいろを間に、
重なる吐息が、

もっと鎖を紅く色付ける。


それは、
ずっと続く、続く、


みらいいろ。





end





お久し振りデス(お辞儀)
大変ご無沙汰致しておりました(スライディング土下座)

12012も再始動デス!から、
わらくしも何か!
と、

ヲタク作業再開という…

前向きなのか後ろ向きなのか…ごほごほ←


また出没したら、
ぜしよしなに('◇')ゞ

やれば出来る子だ!わらくし!


沈黙中にもかかわらず、
ぱちぱち頂いたりして、恐縮です(お辞儀)
ありがとうございます!

またよしなに(はぁと)

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