モジラレツギチギチ

□愛人結び
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ソファのスプリングの状態は、酷く悪い。
もう少し力を加えたら、皮を破って、中のスプリングが飛び出してきそう。


それなのに。
俺の上に、彼は膝をついた。不快な音をたてて、スプリングが軋む。

「…此所でいいの?ベッドまで運んであげようか?」
「いいの。…一回目はここで。だめ?」

早急な求めはむしろ非常に結構。
首筋に、彼の舌が。
紅い髪を掴んで引いて、異議を唱える。
舌はここじゃない。
濡れた唇と舌は、這わせるのではなく、合わせるものです。
水音を奏でて、舌は合わせて。
服は剥ぐものです。一枚づつ、ボタンがいっこ剥れてぱちん、と音がしたけど、これは合わさる音か剥れた音か。


「名前、教えてよ」
「?………ラビ、だよ?」
「違う、本当の名前」
「さてね……嫌なら好きに呼ぶさ。だって」


愛人風情が、名乗る資格なんてないんさ?


彼を守る鎧のような服が、一枚、一枚床へ落ちていく。
知らない場所なんてない身体がぼんやり浮かぶ。……あぁ、好きだなぁ、この身体。

愛人と恋人の違いは。
知らない場所がないか、知らない場所を探すか、です。
身体は見えます。
心は見えません。
見えるところだけで十分です。愛人ならば。

だって。
彼だって、俺のこの見える場所だけ好きなはずなのです。


ラビの身体が、だらしなく片足を下ろした俺の中心に伸びて。
繋がっていた金具を下げていく。既に準備出来てた俺のを取り出して、水音たててしゃぶりつく。
あぁ、俺、この舌も好き。
欲張りで熱くて。やらしくて。
長く伸ばして、糸引かせて、上目遣いに俺を見る、その表情、すごく好き。
もっと深く咥えてほしくなるじゃない?
髪を掴んで、苦しくて顔を歪めるくらい、奥に差し込みたくなるじゃない?
そう、その少し水が浮かんだ睫毛、大好き。


「……っは、んく………」
「上手になったね、ラビ。すごくいいよ……」


かかる息すら、官能の芽をつつく。
お口に差し上げてもいいけど、…んー、そんなに急ぎたくないな。
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