笑って、嗤って、翻す
□甘えは皆無
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「ほ、本当に帰っちまうのかよ・・・」
誰かがそう呟いた。
勝ち組の中学生が、仲間との別れを惜しんで漏らした言葉だろう。
たしかにあのやり方は、勝っても負けてもいい気持ちはしない。
ホントむごいなあ、斎藤さん。
『中学生勝者25名は速やかに16面中央コートに集合。午後の部の練習サーキットに入ります!』
この放送が流れると同時にバスは“地獄”へ出発し、勝った中学生もたびたび振り返りながら、コートへと戻っていった。
さて、私もコートへ戻りましょうか。
――――――――――
「こ、この量を6時間で・・・・・・」
「なんて練習量だ・・・・・・U-17合宿では毎日このサーキットを・・・・・・」
まあ普通にそうだよね。あの(私が作った)練習メニューを初めて見れば怯む。
でもここのコーチは鬼サーキットコーチの柘植さんだから、甘えさせてはくれない。
「きゃつらは3時間もあればいい。
中学生には倍の時間与えてやってんだ!文句のある奴ぁとっとと失せろ!
チンタラしてる暇など皆無だ!」
「柘植さん・・・・・・言い方厳しくないですか?」
と、ここでフォローしてみる。
仲間と辛い別れをしたあと、こんなメニューするなんて身体的にも精神的にも過酷だからね。
「なんだマネージャー・・・意見があるのか?言え」
「そうですねえ・・・
『残ったんなら実力見せろ』
・・・・・・とか?」
「・・・・・・そっちの方が言い方厳しくないか?」
「あれ、そうですか?」
ちょっとフォローしたつもりだったのにな。
あの柘植さんにそんなこと言われたら、きっと私は怖いんだろう。
「・・・まあ、いい。
日が暮れる前に終わらなかった奴は合宿から消えろ!――以上だ!!」
上手く締めて下さってありがとうございました、柘植さん。
私はマネージャー業に戻るフリをしてこの場から逃げた。
甘えは皆無
(文句のある奴ぁとっとと失せろ!……似てない?)