笑って、嗤って、翻す
□こわい人
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「そろそろボクの出番ですかねえ」
若干ウキウキしながらテラスへ出て行こうとする斎藤さん。
そう、今日は地獄の日なのです。
って、地獄の日ってなんだよって感じかな。
「あ、中山さ〜ん」
斎藤さんは、私を「マネージャー」と呼ばずに名前で呼んでくれる。
なんだか普通の友達みたいで、少し嬉しいとか思ってしまうのは秘密だ。
「先にバスの手配をお願いできますか?」
「分かりました」
斎藤さんはニッコリ笑って、それからテラスへ出た。
さてと。私はバスの手配ですか。
携帯を開き、電話帳にある、いつか消すであろう電話番号にかける。
ちょうど4コール目で、それはつながった。
『もしもし』
「中山です。今からアレが始まるので、1時間後に門までお願いします」
『分かりました。では』
かけた相手はバスの運転手さん。
なんとこの合宿専用で雇われたらしい。
いやーなんて財力。誰からの援助かしら。
・・・と考えていたころ、向こうから斎藤さんの声が聞こえた。
「・・・ではシングルスの試合の開始です。負けた方は脱落という事で。
そう・・・・・・今組んだ相手とそれぞれ戦ってね」
瞬間、ざわついていたコートが一気に静寂につつまれた。
こわい人
(前々から分かっていたことだけど)