笑って、嗤って、翻す
□応援する気はなかった
1ページ/1ページ
彼を心配する人、応援する人。
彼―・・・桃城武の仲間は、どうやら高校生をギャフンと言わせたいらしい。
だけどね。そう上手くはいかないんだよ。
だって相手は、鬼だから。
鬼の二つ名は地獄の番人。
5番コートに留まっている彼だけど、実力はもっと上だ。
下位コートの高校生をことごとく蹴落としてきた、言わば『底上げ選手』なのである。
「お前の両手首は――今ので完全にイカれた。・・・勝負アリだ」
見て、いられなかった。
桃城くんの手首は、痙攣を起こしたようにピクピクしていた。
痺れてるのか、ラケットすら握ることができていない。
中学生を応援する気はない。私は高校生だから。
―――でも。
「うおおおおおおおおおっ!!!」
「・・・・・・なんだろうなあ」
あの必死さに?
両手が使えないのに口を使い、あの鬼とラリーをしている。
勝ち目はないのに。無謀なのに。
だけどその試合から、目が話せなかった。
「ゲームセットウォンバイ鬼、6−0!!」
審判の声が無情に響いた。
なんだか悪いことをしているような、居たたまれない思いだった。
応援する気はなかった
(だけど気がついたら・・・)