笑って、嗤って、翻す

□そしてボクは思うのです
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side K.Shiraishi



「先輩っ……」




数名残っているがこっちには注目してへんみたいやから、中山先輩を呼び止めた。

あ、べつに告白やないから注目されても構わへんけどな。




「俺、四天宝寺の白石いーます」

「白石……、蔵ノ介くんだね」




跡部くんのときといい、なんで俺らの名前知ってんねん。

スパイか!?と大阪のノリでボケてみるが、ないな。

そもそも俺ら、面識ないし。

きっと戦略コーチのなんとかさんが俺らの資料持ってて、先輩に渡したんやろ。

俺、なんて鋭いの。自分で言うのも何やけど、大した推察力や。




「おん…やのうて、はい」




おっと、一瞬敬語抜けてもうた。

でも中山先輩は顔をしかめることもなく、平然とした様子で聞いてくれてる。

たったこんだけのことやけど、「聞き上手なんやなあ」と思うなんて、俺は単純なんやろか。




「中学生がいろいろとすいませんでした」

「え、あ、いや。きみの責任じゃないでしょ?」

「でも同じ中学生として」

「…責任感強いんだね」




そう言うと中山先輩は俺の頭を撫でた。

って、えええええええ!

何してんねん!

先輩俺より背低いから、頑張ってる感あってちょっと可愛え…やのうて!


俺は滅多に焦る方やない。

ちゅーか人に感情をよませへん(ポーカーフェイスっちゅーんか?)。

やけどさすがに女の子に頭撫でられたら、焦るわ!




「っ、あの……」

「ああゴメン?」




つい可愛くて、なんて先輩は言う。

けど俺の心拍数は半端ない。

自分、何てことしてくれるん。

柄にもなくドキドキしてまうやろ。やめろ、キモい。


俺はこんなにも焦っとるのに先輩は平然としてるから、仕返ししようかと思った。

やからさっきのを蒸し返す。

「先輩こそ可愛えですよ」って。




「、なにって?」




急にキョトン顔になって、違う意味でドキッとした。

でも少し顔、引きつっとる。

「可愛い」って言われ馴れてないんやろか。




「先輩こそ。背伸びして俺の頭撫でんの。頑張ってる感あってめっちゃ可愛かったっすわ」

「そーれは――……褒めてるーのかな?」




先輩、めっちゃ戸惑っとる。

これは仕返し成功か?と、口元がニヤけるのを必死に抑える。




「褒めてますって。口調おかしなってますけど」





でも少し笑いはもれてしまい、中山先輩は不満そうやった。

どっかの俺様やないけど、「ハン、自業自得や」。




「一応、ありがとう」

「ははっ、ほな。ありがとうございました」

「うん」




冷静でマイペースで、どこかフラフラしてそうな人かと思っとった。

あながち間違ってへんけど、可愛らしいところもあるんやなあ、なんて。






そしてボクは思うのです

(なんや先輩、めっちゃ可愛えやないですか)

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