笑って、嗤って、翻す

□仲良くせなアカン
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―side K.Shiraishi―



「……先輩はどうしてこの合宿に?」




中山先輩が(元を辿れば跡部くんが)つくった重い空気を和ませようと、俺は質問をした。




「勧誘されたんだよ」




先輩は俺らに背を向けて先頭を歩いているため、表情は見えん。

すましてんのか、怒ってんのか分からへん。

やけど声色はいたって普通やった。



淡白な人なんか、言葉はいつも短かった。

自己紹介のときも「マネージャーの中山です」って苗字だけやし。



……ひとつ気になることがあるねん。

“なんでこの人?”って。

ああ、マネージャーの話や。

見た感じ普通やし、媚びた感じもせえへん。

やからって仕事をバリバリこなす敏腕マネージャー!って感じもせん。

どこかフラフラしてる感じかな。






「さあ、人手不足だったんじゃないかな?」





俺の疑問に答えるように、先輩が呟いたのには驚いたわー。




「先輩は、高校三年生なんですよね?」

「そうだよ」

「あの、余計なお世話かもしれないんですけど、」

「受験は終わったんだ。だから暇してて、断る理由もないし」




この人は人の心が読めるのか。

「余計なお世話」だけで受験に結びついて、しかもそれがこの合宿に参加した理由にまで持ってくなんて。

鋭い、察しがいい。

どっかのデータマンやないけど、それはよく分かった。



そこで案内は終了した。みんな自室へ帰ってく。

チャンスや、と思った。







仲良くせなアカン

(どっかのオカンちゃうけど)

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