笑って、嗤って、翻す
□ぜんぶふっとぶ
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「……なんか気まずくなった」
「じゃあ行こうか?」
疑問形だけど歩き出してる時点で、決定事項なのね。
歩き始めると鬼と近くにいた中学生の肩がぶつかった。
「おいデクの棒痛えよ」
謝るかと思ったのに、喧嘩を売ってきた中学生。
某敗者とは同じ考え方になってしまうけど、それはいくらなんでも生意気。
「ちょっと…謝ったらどう?」
「あ゙あ?……うっせーよ女」
「は、」
「中山。いい。…あまり生き急ぐなよ」
「お前誰に指図してんの?」
鬼がとめてくれて、(渋々だけど)許してやろうかと思ったけどまた喧嘩吹っ掛けてきやがって。
ビンタでもしてやろうか、と思った。
でも(生意気なこいつの)優しい仲間が仲裁してくれて、ひとりだけ怒っても大人げないので引いた。
命拾いしたな、………私が。
多分タイマン張っても負けるよね。
「中山」
「…ん?」
「ありがとな」
なんだその………、結構嬉しかった。
照れているのか(いや絶対そうだ)、向こうを向きながら言ってくる鬼の台詞に思わず顔が緩んだ。
素直に「ありがとう」って言わないとことか、乱暴に頭を撫でまわすとことか鬼っぽい。
でもそれがなんだか、やけに嬉しく感じた。
ぜんぶふっとぶ
(最高のご褒美ッス、アニキ)