笑って、嗤って、翻す

□いろいろ面倒
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斎藤さんを引きとめて「どんな案内すればいいんですか」と聞けば、
「とりあえずロビーに中学生集めてるので」と全く答えになっていない返事をされた。

しかもそのまままた歩き出すし。


でも待ってるって言うなら行ってあげないとあれだし、私そこまで鬼じゃないし。

あれ、ていうかロビーってそこじゃん。

ガラス窓だから中見えるし。

もしかしてあのわらわらしてるの全員中学生?

うっわー思ったより多いや。

正面から入るとか特にキツいわー…。

よし、でも意を決して!




「全員いるの?」




第一声、間違ってないよね?




「何の用だ?」




でも帰ってきたのは私の疑問に対する返答ではなかった。

敵意むき出しの返事。


これを言ったのは一番近くにいる少年だったみたい。

名前は……えーっと…覚えたんだよ、たしか。




「……。跡部くんだっけ?」




あくまで笑顔を保って振り返れば、怪訝な顔をされた。

彼の周りにいる中学生何人かも、同じような顔をしている。

うわ、高校生めっちゃ嫌われてるじゃん。

でも佐々部たちのせいだからね。

あれ、私が女子だからってのもあるのかな?




「で、何の用だってんだよ」

「……私さー、どっかのかませ犬みたくギャンギャン言うつもりはないけど、」

「っ」

「敬語くらいは知ってるよね?“中学生”くん?」




胸倉を掴んでもうすぐ触れるんじゃないか、ってくらい至近距離まで顔を寄せた。

やだこの構図。

まるで私、悪役じゃん。


ぱっと手を離すと余計睨まれるし。




「施設を案内して下さるんですか?先輩」




今度は別の中学生が彼に代わって話しかけてきた。

あ、この柔らかい物腰は印象的だよね。


幸村くんだよね。なんとなくだけど入江に似てると思った。




「うん、ここ無駄に広いからね」




仕方なくだけど、と言わなかっただけ褒めてほしい。

私だいぶ大人になったんじゃない?




「こんなに人数いたら点呼もいちいち振り返るのも面倒だから、ちゃんとついてきてね?」




何歩か歩きだしたら後ろから足音が聞こえてきたから、多分ついてきてるんだろう。

なーんか滑り出しビミョ〜。






いろいろ面倒

(いいもん、馴れあうつもりはないもん)

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