連載

□すれ違う想い
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朝起きると乙女からメールがきていた。


《今日日直なの忘れてた!南に怒られるから先行くね!》


そっか、2人は同じ名字だから日直も一緒なんだったね。私は乙女に返事をして学校に行く用意を始めた。


―…―…―…―…―


今日もとくに何もなく、あっという間に放課後になった。南と乙女は日直だしアイコとなるちゃんも帰ったし、私は1人時間潰しのために図書室にいっていた。

そしてそろそろ帰ろうかと思った時、ふと乙女のことを思い出した。まだ教室にいたら一緒に帰ろうかな。

教室にいくと、廊下に周がいた。


『周?なにしてんの』

「あれ」


そう言いながら教室内を指さした周。私は周の指の先にあるものを見た。


『…あぁ』


南と乙女が黒板に書きあって会話をしている。そしてそれを消そうとした乙女の手に、南が自分の手を重ねた。


『!周、こっち』


そのあとすぐに2人が教室から出てきそうだったから、私は周を引っ張って隣の教室に隠れた。


「ぐぁ〜、帰ったらまたコキ使われる。親父のヤツよーしゃねーからなー」

「た…たいへんなんだ?」

「おまえも部活だろ、いけよ!まーしばらくお互い忙しいし、せーぜー1人部屋を満喫しとくんだな!」

「――さみしかったよ。あたし、南が何日かいないだけで、さみしかった!」

「乙女…。着替えがもうねーから、持ってきて。家に帰るのめんどいから」

「へ!?」

「象公園に8時!遅れんなよ!」

「ば、ばかー!」


そのまま2人は私たちに気付くことなく、南は家に、乙女は部活に行った。


『象公園に8時、だってさ』

「……」

『周も部活あるんでしょ?私帰るから』


教室から出ようとしたとき、周が私の腕を掴んで引き止めた。


「オレ、どうすればいい?」

『知らないよ。私は乙女が傷つかなければそれでいいから』

「オレ羽崎泣かすかも」

『そのときは殴る』

「…オレ…」

『早く部活行きなさいよ』


どうすれば、なんて。そんなの私にわかるわけないじゃない。私は周が部活に行ったあとも、1人教室に残っていた。


―…―…―…―…―


「東雲、そろそろ帰れよー」

『はーい』


教室でただただボーっとしていたら、先生にそう言われてしまった。私は仕方なく靴箱にむかう。

そして靴箱の近くまで来たときだった。


「ご、ごめん。あたし今南に着替え持ってかなきゃいけなくて」


周と乙女がいた。剣道部もちょうど終わったとこなのだろう。


「今日は一緒に帰れな「わかってんの?」

「南は自分から離れていったんだよ」


周はそう言った瞬間、乙女を抱きしめた。


「いかせない、南のとこなんか」

「で、でも南が待ってるし、着替えをね」

「羽崎」


一度離れた乙女を、周はもう一度抱きしめる。


「ごめん、オレ結構ココロせまいんだ」

『……』


周も相当辛いんだ。悪いけど乙女、今は周といてあげて…。


―…―…―…―…―


周と乙女が帰ったあと私も家に帰った。そして寝ようかなと思い始めたとき、今井から電話がきた。


『…何』

「相変わらず可愛げねーヤツ」

『うっさい。なんか用?』

「今から下来れるか?」


そう言われてベランダから下を見ると、携帯に耳をあてた今井がいた。


『ちょ、あんたなにしてんの!すぐ行くから!』


私は慌てて上着を羽織り、お母さんにちょっと出てくるといい家を出た。


「早かったな」

『あ、あんた馬鹿じゃないの!?こんな時間に、家に来るなんて!』

「この時間じゃねーと、親父がうるせーんだよ」

『……で、何?』


今井にそう聞いてもコイツは話す気配がない。


『一体なん「今日の放課後」

「羽崎乙女、何してたか知ってるか?」

『なんであんたがそんなこと聞くのよ』

「いいから答えろよ」

『……さぁ、私は知らないけど』

「ならいい。悪かったな」


それだけ言って帰ろうとする今井。これだけのためにわざわざここまで来たのか?……あぁ。


『今井北斗、あんた乙女のこと好きでしょう』

「は、はあ!?」


私の言葉に顔を真っ赤にして驚く今井。わかりやす。


『見てればわかるよ。もしかして、南にやたらつっかかるのもそれが原因?』

「ちがっ、そんなんじゃねーよ!」

『隠さないでさ、気持ち伝えれば?』

「な、何言って」

『乙女に好きになってもらえるかもじゃん』

「うるせーよ」

『ま、私には関係ないか。じゃあまたね今井』


そのままマンションに入ろうとしたら今井に手首を掴まれた。


「今井じゃなくて北斗って呼べよ」

『は?なんで』

「いいから。そう呼べよ、由依香」

『――っ//わ、わかったから!』


私は今井の腕を振りほどいてマンションに駆け込んだ。
あんな顔で、あんな声で…


『ありえない…//』


私の顔の火照りはなかなかとれなかった。


 
 

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