All are miracles
□甘い罠
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“キセキ、仕事頑張れよ!”
出掛け間際、キルアにそう言われたキセキは、人一倍ヤル気(殺る気)を出していた
待ち合わせに5分遅刻し、イルミにくどくどと説教されるが、そんなのは気にならなかった
イルミの小言はおいそれと受け流す
今のキセキは、ある意味で怖いもの知らずだった
ブロロロロロ──……!
物凄いスピードで走る、黒塗りの“いかにも”な高級車
運転手は、ゾルディック家の執事ゴトー
キセキとイルミはゴトーが運転する車の後部座席に居た
これから、ターゲットの自宅へ向かうのだ
ちなみに、ターゲットの自宅はククルーマウンテンから車で片道1時間30分くらい
そして、車に乗り込んでからもイルミのお小言は続いていた……
「ねぇ キセキ、オレの話ちゃんと聞いてる?」
『──え?も、もちろん!(聞いてない)』
突然話を振られて、あわてふためくキセキを見れば、イルミの眉がピクッと微かに動いた
『あ、そうだっ!ねぇねぇ、イル兄っ!私、今日ね 一生懸命頑張るからっ!』
「え……なに、急に?」
『今日の私は(愛の)狂戦士なの!どんなターゲットでも華麗に暗殺してみせるよー!』
キセキはニカッと笑って、イルミにVサインをきめこんだ
『それでね、イル兄にお願いがあるんだけど……』
そこでキセキ“今日は1人で仕事をしたい”と、イルミに懇願する。
『お願いっ!イル兄ーっ!なんだか今日は上手く仕事ができる気がするのー!』
「…………」
イルミは暫く考え込んだ
いつだってそう、キセキはとんでもないヘマをするからだ
しかし、これだけヤル気を出しているキセキ……
頑張るから、と必死に頼み込む妹を無下にする事もできない
それに可愛い子には旅をさせよ。ともいうじゃないか。イザという時は、自分が側についている
「──わかった、いいよ」
考え込んだイルミが結論を出した
「あ、けど 前みたいにターゲット間違えないでよね」
と、ちょっとした嫌味を添えて
『うっ……』
イルミに、ちょっと痛いところをつかれたキセキは、苦虫を噛み潰したような顔になり、ガックリと肩を落とした
が、失敗は成功のもと精神で即復活!
それに今日は、キルアが“頑張れ”と言ってくれた。
私、キセキ=ゾルディック!今なら何でも、できるような気がする
頑張らないでどうするのよ。張り切らないでどうするのよ!
『わーい♪私、がんばるからねー♪』
「はいはい、期待してるよ」
イルミは、相変わらずな表情でそう言うと、ポンポンとキセキの頭を愛しそうに撫でた
キルアの頑張れ
キセキの空回り
イルミのその判断が……
この後、最悪な出来事を生むキッカケを作ってしまうことに