Vanilla

□ロザリオビアンコ
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部屋の前まで着くとバニラは急に緊張した。

なぜなら、この中に入ればヒソカと2人きり。

前回、身体を重ねているだけに変なことを考えてしまう。


ガチャッ


部屋のドアが開く。

ヒソカは悠々と、先に部屋に足を踏み入れる。

バニラは、期待と不安を胸に抱きながらそれに続いた。


「バニラ◆」

『ちょっ……ヒソカ!?』

部屋に入るなり、ヒソカはバニラを抱き上げる。


―――なに、急に……?


バニラはビックリした。

ヒソカは、そんなバニラをベッドの上に座らせると、バニラの足に優しく触れた。

「バニラ、足痛むのかい?」

『っ……う、うん』

「ククッ、だろうね◆だってキミのここ……」

『っあ……』

「パンパンに腫れ上がってるじゃないか……」

ヒソカは、バニラの足をそっと持ち上げると、服従するかのように……足の甲にキスをした。


『んっ……!』

足に走るちょっとした痛みと、ヒソカのキスのくすぐったさに、バニラの顔が歪む。

「ボク……、またキミと会えて嬉しいんだ……」

ヒソカはゆったりとした口調で言うと、そのまま唇をふくらはぎへと這わせた。

『あっ……ヒソ……カ』

「バニラ……」

ただ名前を呼ばれているだけなのに、こんなにも身体が熱くなるのはなぜだろう。

その甘い声が脳内で響くと、まるで魔法がかかったみたいに夢心地になる。

酷く不思議でしょうがない。


『あ……だ、め』

「どうして?」

いつの間にか服の中に入り込んだヒソカの手が、バニラの胸の膨らみを包む。


やだ、それ以上は―――……


やっぱり、怖くて怖くて仕方がなかった。

終わりの見えてるこの恋にどっぷりとハマってしまいそうで。


ツーー……


バニラの瞳から、真珠のような雫がこぼれ落ちる。

泣きたくないのに、涙が溢れ出て止まらない。まるでこの恋する気持ちのよう。

バニラは咄嗟に自身の両手で、顔を覆った。

「バニラ……?」

『……っ。お願い……み……ないで』

こんな姿、見せたくも見られたくもなかった。

心も顔もぐちゃぐちゃだ。

苦しくて悲しくて、悔しくて切ない。

全てが偽物だって、最初からわかってるのに……

名前を呼ばれ、触れられれば、どうしようもなく愛しくて恋しい。


好き。ヒソカが大好きなの―――……





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