Vanilla

□ロザリオビアンコ
1ページ/3ページ






「残る試験は4次試験と最終試験のみ」

トリックタワーから出ると、試験官の男が言った。


えっ―――……


残る試験は、あと2つ。

お姫様抱っこをされたままのバニラは、ゆっくりとヒソカの顔を見上げる。


≪ちなみにコレはゲーム★≫

≪ゲーム?≫

≪そう、恋人ごっこ◆ハンター試験が終わるまでの間の絵空事さ★≫



バニラは、1次試験の時にヒソカと交わしたやり取りを思い出していた。


そう、今のバニラとヒソカの関係は“恋人ごっこ”

ヒソカは、ただ退屈しのぎのためにバニラを利用し

また、バニラはヒソカを用心棒の代役として利用する。


“恋人ごっこ”という薄っぺらな関係。


そして、残る試験はあと2つだという。

ということは、そろそろこの関係に終止符が打たれる。


バニラは、唇を噛み締めた。


っ―――……


胸の奥がキュウっと締め付けられて、鼻の奥がツンとする。


ハンター試験が終われば、ヒソカとはもう―――……


「バニラ★」

『え……?』

「キミの番◆」

気づいたら、クジを引く順番が自分の番になっていた。

4次試験はクジ引きで引いた番号の、ナンバープレートを奪う。

というものらしい。


受験生一人一人が“狩る者”と“狩られる者”になる。

試験官の説明を聞いただけでもまた、過酷そうな試験内容だった。

バニラを抱き抱えたままのヒソカが、バニラを地面へおろした。

すると、バニラは大慌てでクジの入ったBOXの中に手を入れる。


こういうものは、直感で。


これ……かな?

バニラは、最初に指先に触れたカードを引いた。

カードを手に取り、BOXの前から退くと、バニラは恐る恐る引いた番号を確認する……

バニラが引いた番号は……


“301番”


『…………』

え……。これ、何かの間違いだよね?


顔面蒼白。バニラの悩みは尽きない。


「それでは受験生の皆さんは、こちらへ」

協会の人に促され、受験生は大きな船へ乗船する。


ボーー……


船の汽笛が、大海原に鳴り響いた。

受験生一同は今、次の試験が行われるゼビル島という島に向かって、船に揺られていた。


到着予定時間は、明朝。

飛行船の時と同じように、受験生各自に部屋が与えられるようだ。


「はい、ルームキーです。どうぞ」

『どうも』

バニラはルームキーを協会の人から受け取ると、ヒソカの腕を引っ張った。

「バニラ?」

『ヒソカ。い、いこっ……』

「おや……バニラ◆ボクが同室でもいいのかい?」

『別々だと、どーせまた部屋に押し掛けて来るでしょ?』

「もちろん★」

『その手間を省いてあげるだけっ!』

「ククッ……そう、それはありがたい◆」


ヒソカは顔を真っ赤にするバニラを見て、くすりと微笑んだ。





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ