Vanilla
□ロザリオビアンコ
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「残る試験は4次試験と最終試験のみ」
トリックタワーから出ると、試験官の男が言った。
えっ―――……
残る試験は、あと2つ。
お姫様抱っこをされたままのバニラは、ゆっくりとヒソカの顔を見上げる。
≪ちなみにコレはゲーム★≫
≪ゲーム?≫
≪そう、恋人ごっこ◆ハンター試験が終わるまでの間の絵空事さ★≫
バニラは、1次試験の時にヒソカと交わしたやり取りを思い出していた。
そう、今のバニラとヒソカの関係は“恋人ごっこ”
ヒソカは、ただ退屈しのぎのためにバニラを利用し
また、バニラはヒソカを用心棒の代役として利用する。
“恋人ごっこ”という薄っぺらな関係。
そして、残る試験はあと2つだという。
ということは、そろそろこの関係に終止符が打たれる。
バニラは、唇を噛み締めた。
っ―――……
胸の奥がキュウっと締め付けられて、鼻の奥がツンとする。
ハンター試験が終われば、ヒソカとはもう―――……
「バニラ★」
『え……?』
「キミの番◆」
気づいたら、クジを引く順番が自分の番になっていた。
4次試験はクジ引きで引いた番号の、ナンバープレートを奪う。
というものらしい。
受験生一人一人が“狩る者”と“狩られる者”になる。
試験官の説明を聞いただけでもまた、過酷そうな試験内容だった。
バニラを抱き抱えたままのヒソカが、バニラを地面へおろした。
すると、バニラは大慌てでクジの入ったBOXの中に手を入れる。
こういうものは、直感で。
これ……かな?
バニラは、最初に指先に触れたカードを引いた。
カードを手に取り、BOXの前から退くと、バニラは恐る恐る引いた番号を確認する……
バニラが引いた番号は……
“301番”
『…………』
え……。これ、何かの間違いだよね?
顔面蒼白。バニラの悩みは尽きない。
「それでは受験生の皆さんは、こちらへ」
協会の人に促され、受験生は大きな船へ乗船する。
ボーー……
船の汽笛が、大海原に鳴り響いた。
受験生一同は今、次の試験が行われるゼビル島という島に向かって、船に揺られていた。
到着予定時間は、明朝。
飛行船の時と同じように、受験生各自に部屋が与えられるようだ。
「はい、ルームキーです。どうぞ」
『どうも』
バニラはルームキーを協会の人から受け取ると、ヒソカの腕を引っ張った。
「バニラ?」
『ヒソカ。い、いこっ……』
「おや……バニラ◆ボクが同室でもいいのかい?」
『別々だと、どーせまた部屋に押し掛けて来るでしょ?』
「もちろん★」
『その手間を省いてあげるだけっ!』
「ククッ……そう、それはありがたい◆」
ヒソカは顔を真っ赤にするバニラを見て、くすりと微笑んだ。
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