Vanilla

□群青色の春
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『きゃあっ!』




バニラは自分の悲鳴で飛び上がり、目を覚ました。

ここはチェックポイント5。のソファーの上。

大きなタイマーをみればペナルティの残り時間は、五分をきっている。

あ……れれ?

え――……と。自分は、いつの間にか寝ていたらしい。

あまり記憶がはっきりしないのだ。頭の中で白いモヤが霧みたいにかかっていてぼんやりと滲んでいる。

それに、冷や汗で服がベッタリと体にまとわりついていて、少し気分が悪い。

『いっ……』

起き上がろうとすると、右足より先に後頭部に痛みが走った。

痛い。頭が痛い……それになぜか頬がヒリヒリして痛い!

バニラは左手で頬、右手で後頭部を押さえ、頭を横に傾けた。

『………?』

ポケモンのコダック風ポーズの完成っ!



う゛っ……!



そして視界に入る、301番。

301番は、部屋の隅っこの方で体育座りをしている。

やっぱり謎めいた御方だ。

そして301番を見れば、ぼやけていた記憶が多少鮮明に浮き出てくる。

あ……そうだ、そう。

確か301番が、突然喋って、突然美青年になって……

それから、それから―――……



………うん。そう、あれは悪い夢。

完全なる悪夢。

だから、もう思い出すのはやめよう。

バニラが考えるのを止めると同時に、電子レンジがものを温め終えたかのような音が“チンッ”と鳴り、扉が開かれた。

どうやらペナルティ10時間が終了したようだ。

さぁ、また鬼ごっこが始まる。

トリックタワー攻略まで、残り5時間と少々―――

パンパンに腫れ上がった足を引き摺るようにして、バニラは扉へと向かった。

果たして、合格できるのだろうか……

というバニラの不安はあっという間に無くなった。



―――ヒョイッ



『え……?』

バニラは思わぬ事態に喫驚する。

なぜなら、301番がバニラを抱き抱えたからだ。

そう、しかも“お姫様抱っこ”

あの有名な、意外性ナンバーワン忍者よりも意外性がありますよ、それ。

301番さん。






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