Vanilla

□それは、心憂し事柄
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『301番さんっ……!?』

バニラは、突然倒れた301番に駆け寄った。301番はカタカタと音をたてて小刻みに震えている。

……やっぱりいつもの様子のおかしさとはちょっと違う。

『しっかりして下さい……!』

バニラは横たわる301番の肩をユサユサと揺すって声をかけた。すると301番はムクッと起き上がる。

『大丈夫……ですか?』

「………」

……シーン……

あ、うん。いつも通り無言。

なんかよくわかんないけど

『……大丈夫そうですね』

間近で見たら更に恐い301番。怪しいし関わりたくないのでバニラはさっさと301番から離れようとする。





―――ガシッ






301番が不意にバニラの腕を掴んだ。

『な……んですか急に』

「お前……すごく不愉快なんだけど」

『!?』

バニラはビックリした。あれだけ無言を突き通してきた301番が喋ったのだ。

うそ――……301番が喋った!?

しかも自分に対して悪感情を抱いている様子だ。

『不愉快……?』

バニラは怪訝そうに眉をひそめ問いかけた。

すると、バニラの腕を掴む301番の手が、グッと強くなる。

『――っ、放して……』

「そのニオイってさ――……お前の能力?」

『え……』

301番は表情一つ変えずに立ち上がると、おもむろに頭に刺さっている鋲を抜き取った。



―――スッ……

―――メキメキバギッゴキッ……



『!?』

バニラは目の前の光景に、目を見開いた。

まるで骨が砕けているかのような奇妙な音と共に301番の全身がいびつに歪み変形しだしたのだ。

それは、なんとも不気味極まりない。

『な……に……?』

301番に何が起きているのか全く理解できない。バニラは軽く放心する。



―――ビキビキッボンッメキ



耳障りな音と共にみるみる変わっていく301番。

「ふぅ―…」

なんと、301番。先程の不気味な成り立ちとは真逆の、サラサラとした長い黒髪が印象的な美麗男子になったではないか。

バニラは目を皿のようにして立ち竦む。

301番って一体……?





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