Vanilla

□それは、不確かな恋
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「バニラ……バニラ…………」



ボーッとする意識の中で、ヒソカの声が淡く響いた



不思議。体がふわふわと宙に浮いてるみたい



ハッ───……!



『……あたしっ』



気がついたら、窓の外は深い青色。カーテンが閉まっていない部屋からは、もうじき陽が昇るといった風景が見える



バニラは無意識に起き上がろうとした。と、同時に下半身にズキンと鈍い痛みが走った



『……っ』



「バニラ……少し気を失っていたようだ◆」



『ヒソ……カ』



「ボクが夢中になりすぎて加減ができなかった……」



ヒソカは心配そうにバニラの頭を撫でると、愛しむように、額に口づけた



「……痛みは?」



『!』



あぁ、そっか……



私、ヒソカと──……



行為を思い出したら、体の奥底が燃えるように熱くなった















ポロッ……ポロ……



すると、バニラの瞳から、小粒の真珠のような雫が自然と流れ落ちる



バニラは、小さく薄い唇を噛み締めて、小刻みに震えた



「バニラ、我慢しなくていい……ボクを責めて構わない」



『……違うの。そうじゃ……ないの』



“セックスはしない”という約束を破ったヒソカを、本来なら咎めるべきなのだろうが、バニラにそれはできなかった



初めてのセックス。それは、あまりにも神秘的で言葉にし難いもの



枯れたオアシスに水が満ち溢れてくるかのように……何故か心も身体も潤った



───こんな気持ちは生まれて初めて



『怒ってるとか悲しいとか……痛いとかじゃないの……なんで涙がでるのか……わからない』



「バニラ……」



ヒソカは、そんなバニラを包み込むように抱き締めると長い指でバニラの涙を丁寧に拭い取った



「次の試験まで、まだ時間がある◆バニラ、もう一度おやすみ……」



『う……ん』



耳元で優しく囁かれた



ヒソカの腕の中は、とてもあったかくて



心地いい



バニラはそっと瞳を閉じた






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