Vanilla
□それは、夢うつつ
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バニラは一人、ベッドに座っていた。ヒソカは、今シャワーを浴びている
化け物の生臭い血を洗い流すために
二次試験の時は、お互い同じ臭いがして気にならなかったのだが、バニラはヒソカを部屋に招き入れてビックリした
こんなにも酷い臭いがしていたなんて……
先にシャワーを浴びて綺麗になったバニラにとっては酷い悪臭でしかなかった
それと同時に、二次試験の時周りにいた人達は鼻がもげる思いをしたんじゃないか、なんて思った
『……ふふ、なんかちょっと可哀想だったかも』
バニラは思わず、クスッと笑う
「おや、バニラ◆何を笑っているんだい?」
そこに、ヒソカが現れた
バニラはヒソカの声に反応して、うつむき様だった顔を上げた
『え……』
「ん?どうかしたのかい?」
バニラは、ヒソカを見るなり目を皿のように見開いた
“誰?”といった顔をしている
何故ならば、バニラの目の前に居るヒソカは、いつものヒソカと別人、といっても過言ではない様相をしていたからだ
特徴的だった、奇抜なペイントメイクをしていないだけでこんなにも変わるものなのか?
いや、それだけじゃない
オールバックでツンと上げられていた髪型が、今は無造作に垂れ下がっている
端整な顔立ちの男がそこに居た
『ん……随分と印象が違うから』
「ククッ……なるほど◆ボクに見惚れてた?」
不敵な笑みを浮かべて、バニラの隣に腰かけたヒソカが、自身の髪を掻き上げた
「どうなんだい、バニラ?」
ヒソカに不意に掴まれた顎。クイッと上に持ち上げられると、近くなる互いの顔
見つめ合うその目を、逸らしたら“負け”と、本能がそうさせる
『まさか……』
バニラは眉一つ動かさない
「ククク……バニラ。もう少し恋人らしくしよう……そんなんじゃいまいち盛り上がらないじゃないか◆」
そう笑顔で言われても……
『一体、どこまで盛り上がるつもりなのよ』
「約束、ギリギリの所まで……」
『──っ!』
不意に重なるヒソカの唇
『ふっ……ぁ……』
侵入してくる舌に戸惑いながら、バニラはヒソカを部屋に入れたことと“恋人ごっこ”を容易く了承してしまったことを後悔した