刀涙

□交わらない、交われない
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朝露が草を濡らす
陽が昇ってまだ大して経っていないだろう
その証拠に森はまだ薄暗く木々の間から僅かな光が射し込んでいる



白い蛇を模した被り物を被った小柄な人影が薄暗い森を駆ける

突然物影から飛んできた刃物が白蛇の足元に刺さり、その足を止めた


「真庭白蛇だな?」


低い声に小柄な影は動くのをピタリとやめ、木の陰を真っ直ぐ見つめた


木の影から現れたのは顔を半分仮面で覆った男
その仮面には大きく『不忍』と書いてある、否定姫の懐刀の



「貴様は……」



左右田左衛門右衛門





しゃりんと特殊な形状をしたクナイを取り出す




「私に何の用だ」


「真庭忍軍十二頭領の実質的な補佐官であり、真庭の里…忍を纏める何にも代えられぬ里の要」

赤い瞳が闇を映す



「褒めてくれるのはありがたいけど、先を急いでるの。……そこ、通してもらえます?」



「通ってみろ、真庭白蛇」


すぅっと二本の刀を抜く




くるんとクナイを回す







そして二人は駆け出した










†††







キンー…ッッ…ガギン!!


ガン…ガン!!…ギャリー…ッン!





ふわりと浮いた体を空中で一回転して着地する




「………」


砕けたクナイを放り投げる





ピィー……ッッ



左衛門右衛門は何の音かと耳を澄ませたが、目の前の白蛇が吹いていることに一瞬気付かなかった



ドドドと地響きがしたかと思うと現れたのは巨大な白い蛇
小さな白蛇など簡単にひと飲みできそうなほど巨大
陽の光に照らされて瞳がギラリと光る


「白娘子(ハクジョウシ)…刀」


くぱぁと白娘子と呼ばれる蛇は口を開いたかと思うと
その口の中から長い刀が抜き出された


優に白蛇の身長を越してしまうほど長い






「行くよ」


「………ッ!!?」


持ち前のスピードで左衛門右衛門を翻弄する





懐に潜り込むと下から斬りあげる
紙一重で避けられ舌打ちする白蛇


ギャリリー…ッッガァン!!




クルクルと空中で何回転かする

小柄な白蛇は木の上に着地すると勢い良く枝を蹴り、左衛門右衛門に切りかかった










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