刀涙

□そして鳥は椿を食んだ
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「ぉよ」


独特の喋り方にうっすらと目を開ける


「しら……さぎか」


「なだ好格ぇねけ情」


久しぶりに聞いたけど、やっぱり分かり難いな…。


「我ながらそう思うよ」


自嘲気味に笑う白蛇


その体は右目、右腕、左足を失い、脇腹は深く抉れていた


一目見て助からないことは明白だった



「かのぬ死?」


「多分ね…」


「かのいなく怖?」


「よく…、わかんないかな…」


流れる血が白蛇の体の周りに広がる



白鷺がしゃがんで白蛇の頬に手を滑らせる



「白蛇」


「ん?」


「かいいてめ締き抱?」


「どうぞ」


抱き締めた白蛇の体は想像以上に小さく冷たかった



「白鷺、いつもの無表情はどうしたよ…」


ポタッと頬に温かい雨が降った


「泣くなよ……」




左手で白鷺の涙を拭う



ゴフッと吐血して白鷺の顔に血が跳ねる

赤は白鷺によく映えた




嗚呼…



白鷺、お前の顔もよく見えなくなってきた



まさか自分が死ぬなんて




思ってもみなかった







「先に逝く不甲斐ない補佐官を……許し……」



隻眼から涙を一滴流し


白蛇は動かなくなった




白鷺は思った


血にまみれ死んだ姿はどうしようもなく美しいー…と








「白蛇ー…」






これは歪んだ愛なのか



それは白鷺にもわからなかった









 

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