影涙

□悪童と肉食獣
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ウィンターカップでの廊下、誠凛のマネージャーである漆原咲はトイレに行ってその帰りだった


会場の長い廊下を歩く



「よぉ」



カツリとローファーの踵が鳴った



「……なにか」



声がした方に視線を投げる



目の前にいたのは長い前髪の見慣れない青年
ジャージを着ているところを見ると学生のようだ


青年は「んな見んなよ」と言うと「ふはっ」と笑った


なんなんだ


「……すいません」


一応謝っておこう、なんか面倒くさい予感がプンプンする


「お前が、”帝光中最強”っつーのは」


不良よりも質が悪そうな気がする


「勝手に呼ばれてただけです」



青年はまた「ふはっ」と笑った


「会ってみたかったんだよなぁ」


カツカツと距離を詰めてくる青年に思わず一歩後ずさる


「バスケができなくなって、どんだけ歪んだ顔してんのか」



ニヒルに笑う青年に咲は目を細めた

「で?どうでしたか」


青年、花宮真は咲の顔を覗き込むように顔を近づけた



「つまんねぇ」



咲は「へぇ」と声を漏らした


「”あの事件”からまだそんなに経ってねぇからまだ引きずってんのを楽しみにしてたが…」


こつんと額を小突かれた


「いっ!!」


「思ったより元気そうでよかったー…なぁんて言うかよバァカ」


意地悪く笑う花宮に咲は額を抑えながらクスリと笑った



「”人の不幸は密の味”と言いますが、そのことわざを具現化したような人ですね、あなたは」


その言葉に、ニヤリと口角をあげる花宮
その顔は【悪童】そのもの



「今度は俺がお前を潰してやりてぇな」


お前んとこの木吉みてぇにな




今度は咲がニヤリと口角をあげた
その眼はまるで肉食獣を連想させ、花宮はゾワリと背筋を粟立たせた




そして咲は腹の底に響くような重く静かな声で呟いた


「できるもんなら」






そして二人は笑う、嗤う






Fin

花宮初です
花宮の口調わっかんね(笑)

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