お題小説
□翼
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──雨が降ってる。
そう、客観的にこの空から落ちてくる沢山の雫を肌に感じていた。
大切な人を失った。
大切に大切にしてきたつもりだったのに、いつの間にか傷つけていた。
俺はお前を手に入れたことで、舞い上がっていただけだったのかも知れない。
お前から良い返事がもらえた日、バイトからの帰り道、空も飛べるんじゃないかと、星空に両手を広げた。
片翼を失った今、俺は飛べない。
飛べなくなった鳥は、空に恋い焦がれながら命がつきるのを待つ。
俺は足を止めた。
目の前に、何かが転がっている。
碧いもの。
「鳥?」
雨にうたれ、ぐったりとした“もの”は鳥だった。
インコだろうか。
片方の翼がボロボロになっている。
もう死んでいるのかと、近付くと、怪我しているにもかかわらずバサバサと翼をはばたかせ必死に逃げようとした。
「お前も飛べないのか」
俺はその鳥を連れて帰った。
途中、何度も暴れて大変だったが、家に着くころにはそんな元気もないようだった。