お題小説

□明けない夜
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俺は今、どこにいる?
ここはどこだ?

うなるような轟音。
建物の崩れ落ちる音。
これは悲鳴?



俺は必死に逃げた。
逃げるしか脳になかった。
友人も家族もそっちのけで。
目をつむりたくなる光景。
赤く見えるのは血か炎か。

戦争撲滅をかかげていたのは当の昔で、人間は結局争いを続けている。



怪我をしながらも、赤く染まる街からなんとか逃げ切った。
炎の中を走ってきたからなのか、極度の緊張からなのか、喉がヒリつくほどに乾く。
息がなかなか整わない。

高台へ登った。
街から外れたここは、少し静かで、現実離れした気になる。
見慣れた街が、まったくの異世界に見えた。

途端に辺りが暗くなった気がした。
そこで気がつく。

──ああ、今は夜なのか。

振り返って街を見た。
赤い。
紅い。
こんなにも眩しいと思ったことがないと思うほど、街は明るかった。
まるで朝日を浴びたのように。

しかし空はどっぷりと黒い。
街の赤は、闇に飲み込まれるように揺れる。

本当の朝日を見るのはいつだろう。
このままずっと、この街は闇に飲み込まれていくだけのような気がして、俺はその場に座り、膝をかかえた。





END

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