ストーリー

□Re:
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『Re2:』

もう日が短くなりはじめてマフラーをしていても不自然じゃない季節が来た。 今日は水曜日。昔から水曜日は木曜日より好きだ。月・火・水・木・金の真ん中であるこの日にいいことがあると残りの二日をうまくやり過ごせる。
今日は学校帰りにスタバにいく。これも“いいこと”の内だし残り二日を乗り切るための自分を励ます会。いつもは買ってすぐ手に持って移動するけどこの会の時は店の中でまったりして帰る。 
授業が終わって、友達の遊びの誘いも手慣れた感じであしらって下駄箱に向う。『あかさわぁ』
靴を履きかえていたら後ろからお前に呼ばれた。俺に絡んでくる奴がいくらいたってお前の声だけは絶対にわかる。 
『お前これから暇?』 
『うん、なんで?』
『行きたいトコあるから一緒にこいょ。なぁ?』
うん、そう答えたお前は行き先すら聞かずについてきた。 
学校の最寄り駅から3駅先に俺たちの家はある。そして俺のよく行くスタバは自宅を挟んで駅とは反対側にある。駅から徒歩にしては遠いこともあっていつも店内が静かなとこが気に入っている。 
俺たちのホームタウンに着いてスタバにむかって歩いてた。角度によってハッとするくらい綺麗なお前の横顔は現実離れして見えた。それはどっかに消えてしまいそうな儚ささえ感じさせた。だから俺は2・3歩前を歩いて、左手をお前の方にわかるかわからないかくらいの程度で差し出した。でもお前は気付いてうれしそうに指を絡ませてきた。これで消えてしまいそうなお前を現実に繋ぎ止めることができた。絡ませた指が何よりの安心感だ。 
『アタシ本屋にいきたぁい』
そう言われたので二人でスタバの隣にあるTSUTAYAに行って、お前は洋書を1冊買い俺はファッション雑誌を買った。 

『何になさいますか?』
『キャラメルスチーマー、SHORTのHOTで』とお前が注文したので、キャラメル好きのお前に便乗して俺はキャラメルマキアートにした。 
狭い店内は2Fに席があり、たくさん木の椅子がある中で4席だけ真っ赤な座り心地のよいソファがある。注文したものを持って2Fに行き、その赤いソファに座った。ここはちょっとしたやすらぎの場で、お前以外連れてきたことはない。 
俺がマドラーをとりに席を立って帰ってくるとお前はさっき買った洋書を読んでいた。俺がマドラーを渡すとありがと、と言いキャラメルスチーマーをかき混ぜ一口飲んでから『なごむー』と言ってまた本を読み始めた。それを微笑ましく思って俺もさっき買った雑誌を読み始めた。
お前は本に熱中してるかと思うと、俺の方をチラっと見る。そして俺が雑誌を見続けているのを確認するとまた本を読み始める。そんなことを1時間繰り返していて、俺はいなくならないから大丈夫だ、そう言おうかと思ったけどチラ見してくるお前が可愛くてやめた。
きっと他の誰かじゃこんなふうにいかない。きっと会話が途切れないように気を使ったり気疲れしてしまう。まして、本を一緒に読むなんてありえないだろう。他の誰かじゃなんつーか、お前じゃなきゃダメってことだな。そう思ったら勝手に顔がほころんだ。
そしたらちょうどチラ見してきたお前と目があった。『帰るか』。
綺麗な笑顔を浮かべたお前は、うん、と答えた。
あと二日、余裕そうだ。
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