ストーリー

□見守り人
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*見守り人*



…――
『美嘉-寝てたか?』
『…今何時?』
『3時。寝てたのか?』
午前3時のことである。
『今ちょうど意識とびそうだったっ』
『美嘉さぁ迎え来てくんね?』
『え?』
『お前俺のこと好きだろ』
明らかに酔っている時の声である。

『えっでも私シャワー浴びちゃったしすっぴんなんだよ』
『お前に逢いたいんだよ。ダメ?』
『んー』
『ダメならはっきり断ってくれていいぞ』
『パジャマで行くからね』
『…美嘉,ありがとな』



2年前、私がこの町を出る直前にもこんなことがあったっけ。
…―――
『もしもし、シン』
『美嘉?』
『…迎え来て…』
『今どこなんだよ。大丈夫かっ?』
『うち』
『今から向かうから待ってろ』

…―ップーップーップーップ

それからすぐに迎えに来てくれたっけ。
お互いラフなかっこうしてたっけ。
今日と違うこと言えばシンが酔ってなくて運転してくれたこと。

結局シンの運転が荒くて私は具合悪くなって、ドライブはすぐ終わってファミレスで朝5時くらいまで話したっけ。

私は名残惜しかった。でもここでシンに甘えたりするのはさっぱりした私たちのスタンスにあわないと思ってしなかった。
シンとの思い出を胸に2年前の春、この町を旅立った。
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